前回の記事:
オリックス先発陣の捕手別成績を考える(2018前半戦データ)
からの続きであり、本記事ではブルペン陣の成績をまとめる。
1.全体について(おさらい)
まず、キャッチャー毎の、投手成績(全体)は以下の通りとなった。
全体を見ても中継ぎ陣の成績は何もわからないのだが、ここで初めに、驚愕の事実に触れておきたいと思う。
主要中継ぎ陣である吉田、増井、山本、近藤、澤田、黒木の6人が投げた投球数は205回2/3であり、なんとチーム全体の28.3%を投げていることになる。この割合は直感で言って、明らかに高い。すべての試合を平均して、1試合で2.5イニングは勝ちパターンの中継ぎ・抑え投手が投げていることになるからだ。
ちなみに、上記6人が投げた205回2/3の、平均被OPSは .577であり、非常に優秀である。
ここからは、個々の選手のデータをまとめていく。
2.中継ぎ・抑え投手の捕手ごとの成績
◆ 吉田 一将
登録試合74試合中40試合に登板。登板率=54.1%、連投数=13回、回跨ぎ数=6回。
山崎との相性の良さが目立つ。伏見は1試合だけ炎上3失点した以外は、実はパーフェクト。
→ 誰と組んでも安定しており、実に優秀。
◆ 増井 浩俊
登録試合80試合中38試合に登板。登板率=47.5%、連投数=10回、回跨ぎ数=3回。
ブルペン陣唯一の、開幕から常に一軍登録である。
非常に奪三振能力が高く、抑えとして理想と言っていいレベルの成績。シーズン序盤は不安定な投球が多かったが、落ち着いてからは圧巻のピッチングが続いている。
→ 誰と組んでも安定しており、実に優秀。
◆ 山本 由伸
登録試合60試合中35試合に登板。登板率=58.3%、連投数=8回、回跨ぎ数=0回。
オリックスの中継ぎ陣で最も被OPSが低く、8回を任せるのに最も相応しい人材といえる。若月、山崎いずれと組んでも超優秀ではあるが、若月との方がなお好相性のようだ。
→ 若月のほうがベター。
◆ 近藤 大亮
登録試合72試合中33試合に登板。登板率=45.8%、連投数=9回、回跨ぎ数=3回。
改めて眺めてみると、山崎とのバッテリーが非常に優秀である。また見落としてはならないのが、伏見とのバッテリーだ。K/BB(三振と四球の割合)で考えると非常に支配的であると言える。
→ 山崎または伏見とのバッテリーが望ましい。
◆ 黒木 優太
登録試合69試合中31試合に登板。登板率=44.9%、連投数=9回、回跨ぎ数=1回。
誰と組んでも満足の行く成績は残せていない。若月と組むことが圧倒的に多いようだが、防御率的には山崎のほうが優れている。四球の数の差から考察すると、山崎は四球まで視野に入れて配球をしているのではないかと思う。しかしいずれにせよ、勝ちパターンの中継ぎとしてはしんどい成績だ。
→ いっそのこと、先発転向もあり?
◆ 澤田 圭佑
登録試合58試合中27試合に登板。登板率=46.6%、連投数=6回、回跨ぎ数=5回。(※開幕直後の「登録されているけど登板しない期間」は登録されていないものとみなした。)
山崎とのバッテリーが非常に優秀である。実際に試合を見ていると、真っ直ぐを主体にどんどん攻めていく組み立てが出来ているような印象がある。
→ 山崎メインで組むべき。
◆ 比嘉 幹貴
実は少ない登板機会で非常に安定しているのが比嘉である。
今シーズン通算の被OPS .456は、山本由伸と遜色ない数字である。また、誰とバッテリーを組んでも非常に安定しているが、若月との好相性が特に目立つ。
ここまでの起用頻度と成績を比べると、かなり過小評価されていると言える。柳田に延長12回に決勝ホームランを打たれた試合の印象が悪いが、回跨ぎだったし、そもそも打った柳田が凄かった。
→ 後半戦は積極的に勝ちパターンとして起用していってほしい。
3.バッテリーの組み合わせと起用を考える
上で見た相性を簡単にまとめると、以下の表のようになる。
若月 | 山崎 | 伏見 | 高城 | 推奨 | |
吉田 | ◎ | ◎ | ◎ | ? | 若月、山崎、伏見 |
増井 | ◯ | ◎ | ◎? | ? | 山崎、伏見 |
山本 | ◎◎ | ◎ | ? | ? | 若月、山崎 |
近藤 | △ | ◎ | ◯ | ? | 山崎 |
黒木 | △ | △ | ✕ | ? | ー |
澤田 | ✕ | ◎ | △ | ? | 山崎 |
比嘉 | ◎ | ◯ | ◯ | ? | 若月 |
全体的に山崎の万能さが際立っており、山崎を抑え捕手として積極的に起用したい結果となった。伏見も、イニング数は少ないものの終盤からの抑え捕手として十分に起用できるものと思われる。
一方、若月は、山本とのバッテリーは正に無双状態だが、増井と近藤と組んだときのマイナスが気になるか。しかし、先発投手から直接、吉田、山本、比嘉にスイッチしたときには、引き続きマスクを被らせるべきだろう。
4.後半戦に向けて
- 比嘉の登板頻度をもっと上げて良いと思われる。その結果、吉田や山本の負担が軽減されることが期待される。
- 澤田、近藤には先発が6回を投げきれなかったときの繋ぎとして、試合展開を締めてもらうポジションで起用することが好ましいと思う。
- 3点以上の点差があるときには、酷使のバランスをとる目的で、思い切って比嘉、澤田、近藤に7、8回を任せることも視野に入れるべきではないか。
以上が実現できれば、吉田(7、8回)、山本(8、9回)、増井(9回)の負担を抑えながら後半戦を戦えるのではないかと思う。
少なくとも後半戦に入って登板頻度を劇的に減らさないと、吉田、山本、増井の2019年シーズンは無いと認識すべきである。(というか、後半戦途中で離脱すると思う。)
と、一ファンでもこれだけ危機感を持っているのに、高山コーチと福良監督はいつまで酷使を続けるのだろうなあ。高山コーチは何かのインタビューで、酷使にならないように配慮している・・・とか言っていたような気がするが、数字から見るとその発言は完全に嘘になっている。酷使を諫言できる球団スタッフもいないのだろうか。そりゃ長年優勝できないわけだ。
ちなみに、日本ハムの中継ぎ陣の登板数は非常によく管理されていて、酷使されることなく非常にバランスよく起用されている。長いイニングを投げられる先発(上沢、マルティネス)がいることに加え、フロント・監督を含めたチーム全体が、非常に綿密に計画できているのだと思う。・・・長期的な視点を持てるフロントや監督が羨ましいなあ。
10年スパンで監督を任せられる人材が、やはりオリックスには求められる。能力的にも視野的にも、そんな人材がOBにいるかというと話になると微妙だ。田口監督がはまればいいのだが、果たしてどうなるか・・・。
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