オリックス先発陣の捕手別成績を考える(2018前半戦データ)

ちょうど前半戦が終わったという区切りもあり、2018前半戦の捕手別の投手成績データを集計してみた。正直言うと、このデータは伊藤と若月のリードを比べたいと思ってオープン戦から集計し始めたのだが、伊藤がDeNAにトレードになってしまった今、実質的に若月と山崎の比較が核になっている。

しかしながら、前半戦でぱっとしなかった成績の先発投手の流れを変えるためにも、後半戦は伏見や高城が先発マスクを被る機会があるだろう。その際に、「若月や山崎が捕手のときと比べてどうか?」という側面で試合を見ることができれば、もっと楽しく野球が見れると思う。

というわけで、前半戦におけるバッテリー毎の投手成績のデータを基に色々考えたいと思うのだが、前回にデータをまとめたのは、
「オリックス投手陣の捕手別成績(2018年6月9日まで)」
の記事だったので、約1ヶ月ぶりにデータをまとめることになる。せっかくなので、大きく傾向が変わった点も取り上げながら、以下にて考察をまとめていきたい。


1.全体

まず、キャッチャー毎の、投手成績(全体)は以下の通りとなった。

 

伊藤:若月:伏見:山崎 = 7:56:6:31くらいの比率でマスクを被っていることになる。ほぼどの指標を見ても、若月が最も優秀ということになるのだと思うのだが、アルバースが若月とのみバッテリーを組み、86イニング(若月が守ったうちの約21%)を投げていることを考えると、トータルの成績は山崎と似たようなものだと思う。(もちろん、山崎がアルバースと組んだときにどうなるかを無視している話だが。)

さて、以下3点は、ぱっと目について気になる点だろう。

①山崎の被ホームランの多さ

山崎の被HRの多さは、いくらアルバースの分を考慮したとしても、若月と比べて有意に多いと言えるだろう。若月はおよそ11.9イニングに1本の割合でHRを打たれるが、山崎の場合は、8.7イニングに1本の割合だ。これは試合数に言い換えてみると、若月は4試合で3本しかホームランをうたれないのに、山崎は3試合で3本のホームランを打たれることになる。山崎は、被HRを減らせるように、何かを見直しても良いのではないかと思われる。(ただし、それが具体的に何であるかはこの記事では考えない。)

②山崎の防御率の低さ

被OPSは若月の方が優れているものの、防御率は山崎の方がはるかに良い数字を残している。被HRは山崎の方が遥かにペースが高いのにこの結果は多少驚きだ。個人的に思うのは、ピンチになってからの引き出しを用意しているかどうかということに加えて、四球率の違いが影響しているのでは無いかということだ。

9イニングあたりの四球数は、若月が2.37個、山崎が2.96個であり、2試合やれば四球の数が1個異なる計算になる。個人的な仮説として、「山崎は勝負の中で効果的に四球を出しているため、結果として防御率が低くなっている」ということを考えた。これが正しいかどうかは誰もわからないが、この視点を持って後半戦の試合を観ていきたいと思う。

③伏見の与死球数の多さ

イニング数が少ないから何とも言えないものの、伏見の与死球は、かなり多い傾向にある。計算上のペースとしては、若月の倍以上の頻度で死球を与えることになる。したがって、伏見はインコースをより積極的に突いていくリードをしているものと思われる。伏見は防御率が圧倒的に悪いが、サンプルがそもそも少ないし、小林や金田と組んだ割合が高いので、もうちょっと出場させても面白いのではないかと思う。


ここからは、個々の選手のデータをまとめていきたいが、「先発した試合で、結果としてチームが勝ったかどうか」をよく考えたいと思う。

2.先発投手

◆ 西 勇輝

14試合先発。うち、チームが勝利したのは7試合。西の登板試合で、チームが勝つ確率が50%しかないというのは、少し辛いものがある。

若月と組んだときの球数の少なさは目をみはるものがあり、被OPSも優秀である。具体的に言うと、8回115球強で、2、3失点に抑えることが見込める数字だ。ただし、6月時点と比べると、若月と組んだときの成績はかなり悪化してきている。若月としても、打てない分、西をしっかりリードしておきたいところだろう。
→ 若月と組むべきだが、成績が悪化した場合は伏見や高城とのペアを試すこともあり得るだろう。

 

◆ 山岡 泰輔

14試合先発。うち、チームが勝利したのはなんと、4試合のみ。つまり4勝10敗である。山岡が投げる試合は70%以上の確率で負ける計算になる。

2017シーズンも伊藤との相性が良かったし、オープン戦でも伊藤とばかり組んでいたので、伊藤と組めば・・・と再三言ってきたが、その伊藤が放出されてしまった。そこで数字を見比べると、山崎と組ませるしか無いように思う。山崎でも勝てなければ、高城や伏見を最後に試し、それでもなおダメならば中継ぎ転向しか無いだろう。

また、1試合当たりの平均投球回数がわずか5.7イニングというのは、いくらなんでも少なすぎる。山岡がこれでは、中継ぎ陣に負担がかかるばかりである。長いイニングを安定して投げられるよう、ピッチングの組み立てや力配分を見直してもらいたい。

個人的な考えだが、ピンチになると外の変化球のボール球から入って、結果的にカウントを悪くしてストライクに投げ込んだ真っ直ぐを狙い打たれて長打になるケースが非常に多いと思うので、そのあたりを高城と見直してほしい。
→ 7月中旬〜8月初旬の3、4登板のうちに山崎、高城、伏見のバッテリーを満遍なく試し、なお勝てなければ中継ぎに転向すべきだろう。

 

◆ アルバース

14試合先発。うち、チームが勝利したのは10試合で、残りは引き分けが2試合、負けたのが2試合。このうえなく優秀な先発だ。


若月だけとしか組んでいないが安定して非常に優秀。とにかく四球が少なく、長打もなかなか打たれない。球数がちょっと多めだが、7回110球2失点が常に期待できる。ただし、実際は6回95球くらいで降板する(させられる?)ことが多く、長いイニングをあまり投げないでの成績である。実際、1試合あたりの平均投球回数は6.14イニングだ。前半戦は、中継ぎが常に酷使されてきたことを考えると、アルバースが7イニング目を投げるかどうかは非常に重要な要素である。
→ 引き続き若月と組み、7イニング目を投げきらせるような起用をしてもらいたい。

 

◆ 金子 千尋

13試合先発。うち、チームが勝利したのは6試合である。防御率的にも妥当な結果か。


段々と調子が上がってきてはいるように思うが、それでも1試合あたりの平均投球回が6イニングに満たない金子というのは、ちょっと信じられない。成績的には7回120球弱で3失点が期待できるので、スタミナ的にもそのくらいは投げてもらいたい。

そして、山崎がほぼ専属捕手になっているが、被HRの多さなどを考えると、他のキャッチャーを試してみたいという考えも当然起こるだろう。若月とは金子が組みたくなさそう(2017年開幕戦のときはひどかった)なので、高城と組むことが後半戦は増えるのではないかと思う
→ 7イニングを投げきってもらえるように起用し、また高城とのバッテリーが増えたときに、どうなるか注目したい。

 

◆ 田嶋 大樹

12試合先発。うち、チームが勝利したのは8試合であり、勝てるピッチングをしているのがこの田嶋である。


田嶋は真っ直ぐでどんどん押していくことのできる、類まれなる素質があることはオリックスファンならば皆感じていることだろう。ただ、現在は左ひじの張りで登録抹消後の調整が続いており、非常に心配な状況であることには違いない。見方によっては、大きな怪我につながる前にコンディションを整えることができてよかったと言える。新外国人先発投手ドン・ローチもいるので、無理をさせないでじっくり調整させてあげてほしい。

ここまで若月が100%専属捕手になっているが、上の表を見ても分かる通りそこまで成績は芳しくない。特に球数が多く、被HRや与四球の多さも目につく。当然の結論ながら、バッテリーを変えてみることを提案したい。山崎とのバッテリーを増やすのはもちろんのこと、インコースを強気に突く伏見とのバッテリーも面白いだろう。私が思うのは、DeNAでちょっと似たような感じのタイプの濱口と組んでいた高城がかなり面白いのではないか、ということだ。

個人的に若月とのバッテリーで感じているのは、高めの真っ直ぐが少ないこと、追い込んでから変化球を選択しがちであることである。追い込んでから、一番やっかいなボールとなる高めの真っ直ぐをもっと相手打者に意識付けられるような配球をしてほしいと思う。また、若いカウントから高めの真っ直ぐをどんどん使っていけば、フライアウトが容易に得られ、球数が減るだろうと思う。

→ 武器である真っ直ぐを最大限活かすような配球をしてもらいたい。

 

◆ ディクソン

先発10試合中、チームが勝利したのは3試合のみ。リードして降板しても中継ぎ投手が打たれることもあり、何かとかわいそうだ。

ここまで捕手によって差がでるのも珍しいくらい、圧倒的な差がある。ここ3試合くらいは、若月はディクソンのツーシームを有効的に使えており、それが好成績に繋がっていると言える。

ただ、若月とのバッテリーは被OPSが超優秀であるにも関わらず、防御率は凡庸である。(防御率だけで比べると、金子ー山崎のバッテリーと変わらない。)本来であればこの被OPS 0.536という数字的には防御率1.90くらいが見込めるのに実際の防御率は3.18というのは、ピンチ時の配球が良くないことが原因である可能性がある。ナックルカーブで逃げるのではなく、ピンチの時ほどツーシームに頼っていけばいいのだ。

加えて個人的に、チェンジアップもかなり良いので、もっと使っていって良いと思っている。(逆に、スライダーはあまり良くないと思う。)
→ ツーシームとチェンジアップを効果的に使えれば、ある程度の成績は残せる。

 


3.バッテリーの組み合わせを考える

上で見た成績を簡単にまとめると、以下の表のようになる。

目標成績 若月 山崎 伏見 高城 推奨
西 8回115球 3失点 若月
山岡 7回120球 3失点 山崎伏見高城
アルバース 7回110球 2失点 若月
金子 7回120球 3失点? ✕? 高城?山崎
田嶋 6回100球 2失点? 高城?伏見
ディクソン 7回110球 3失点 ✕✕ 若月
ローチ 7回110球 3失点? 若月?

「目標成績」は、バッテリーを組んだときに期待したい成績という意味で書いた。高城の場合はデータがもちろん全く無いが、これくらいを何とか!・・・という期待値込みで書いている。

 


4.中継ぎの負担を考慮して、先発や野手の起用を考える

オリックスファン誰しもがドン引きしているくらい、中継ぎ陣は酷使されている。このことと、先発投手や野手の起用について簡単に触れておきたい。

①先発投手に、もう1イニング頑張ってもらう必要がある。

 上記の「目標成績」の通り先発投手が投げてくれれば、1週間でブルペンが消費しなければいけないイニングは、12イニングくらいで済む(延長線が無いと仮定して)。この場合、増井、吉田、山本、近藤、比嘉、澤田の6人で単純に等分してひとり2イニングで済むので、酷使には絶対にならないだろう。

しかし実際は、上の表の「目標成績」より1イニング少ない投球回で先発を降板させることが非常に多い。(イニング数と先発数を考えれば、すぐに証明できる。)そのために中継ぎ陣の登板過多が恒常的に発生しており、酷使につながっている。したがって、「先発にもう1イニング行ってもらう」という意識を明確に持ち、後半戦は中継ぎ陣の負担を減らしていく起用をしていってもらいたい。

②打力をどうにかしないといけない。

 打つほうがある程度点を取らないと、どうしても接戦の試合展開になり、1点も取られたくないがために中継ぎ陣を早めに投入したくなることが多くなるだろう。これへの対策は、以下の2つがあると思っている。

1.とにかく点を取れるオーダーを組む。

とにかく点を取ることを優先して、多少の守備は度外視してオーダーを組むようにする。(=今いる選手は限られているが、その中で最大限に打力を重視する。)
したがって、宗、山足のような「代わりがいる低OPSの打者」を起用することは完全に誤りであると言いたい。

2.早めに代打を仕掛ける。

中継ぎ陣を投入した後は、積極的な代打で点を取りに行くようにする。したがって、若月や山崎や安達は終盤になれば、高確率で代打を送るようにする。特に、伏見を積極的に終盤に代打で起用すべきである。

上記1、2は、今のところ、あまり実現しているところを見たことが無いように感じる。特に2はこれまで、一番欠けている采配だと思っている。中継ぎ陣をふんだんに投入しておいて何とか0点でしのぎ、最後の最後の12回裏にようやくT−岡田が出てくるというようなことがままあるが、何の縛りなのか。

早めに中継ぎを投入し1点を争う展開にしているのだから、打てる打者をどんどん代打等で起用していかないと、無駄に延長戦になったり、投手が消耗することにしかならない。(相手をとにかく消耗させることを目的としているならば有能采配だが。。)

 


5.中継ぎ陣の成績

・・・ここまで非常に長くなったので、中継ぎ陣の成績は、次の記事でまとめることにするとしよう。

 

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