NPBのドラフト改革を考える:「戦力均衡」と「ウェーバー方式」について(2018年10月27日)

今年のドラフトも面白かった

贔屓チームは1位くじを外したものの、今年も大いに楽しませてもらった。ドラフトは、事前に自分で勉強していればいるほど当日楽しめることが、自分としては特に楽しい。(今年はあまり勉強できなかったが。)

しかし、NPBのドラフトについていつも思うのは「戦力均衡」という点で、果たしてこれでいいのか?ということだ。自分としては、現行のNPBのドラフト制度は「戦力均衡」の要素が非常に少なく、是正すべきであると考えている。

1.戦力均衡とは何か

そもそも戦力均衡とは

「戦力均衡」とは、チーム間の戦力格差が少ない状態であることを指す。したがって、「戦力均衡」のためには、弱いチームが優先的に補強しやすかったり、一方で強いチームが補強しにくくなるというような制度が必要だ。

大事なのは、「平等」は「戦力均衡」の役割を果たさないということだ。「戦力均衡」の実現のためには、戦力格差を縮めるような何か具体的な仕組みが存在していないといけない。(非常に長い目であれば、「完全平等」は、長いスパンでの「戦力均衡」を実現するが。ここでいう長いスパンは10年単位になるだろう。)

戦力均衡のメリットとは

真っ先に思いつくメリットは、興行的なメリットだ。ゲーム差が広がりすぎることを抑止できるので、シーズンを通しての順位争いの盛り上がりが期待できる。また、長年低迷するチームが生まれにくく、全球団が最低限の水準の観客動員を期待できる効果も期待される。

しかし、自分が一番指摘したいのは、「戦力が均衡していれば、頭一つ抜け出すために、各チームが考え始める」というメリットだ。どのチームも似たような戦力であれば、その中で勝つためにはどうしたら良いかと思考を重ね、戦略を練り、新たな作戦を生み出していく。そうして競技自体が発展していき、より魅力的になっていくことが期待できる。要は競争原理が働きやすくなるということだ。

2.戦力均衡の思想に反する、現行の部分的ウェーバー方式

私は、今のNPBのドラフト制度は戦力均衡を促す制度ではないと思っている。なぜそう思うかを、現行の制度について述べながら説明したい。

まず、1巡目は12球団が平等に入札し、競合した場合はくじ引きを行う。強いチームも弱いチームも平等に扱われるため、「戦力均衡」の要素は無い。

とここまで読んで、「いやいや、2位指名は最下位チームから始まるから優遇されているのではないか?」と思った人もいると思う。確かに、(指名順が先のリーグの)最下位チームは、13番目の選手を指名することができる。

折返し方式は「平等」である

しかし、忘れてはならないのは、現行の折返し方式である。つまり、2位指名を一番始めに行ったチームで言うと、3巡目で指名する選手は36番目の選手になるということだ。

一方、2位指名を最後に行うチームは、24番目の選手を2位指名し、続けて25番目の選手を3位指名する。したがって、これら両極端な2チームが2巡目、3巡目で得た価値の比較を行うとすると、

最下位チームが得た価値:(13番目で獲得した選手の価値) + (36番目で獲得した選手の価値)
1位のチームが得た価値:(24番目で獲得した選手の価値) + (25番目で獲得した選手の価値)

を比較することになる。どちらのほうが得であるかは、一般に指名選手がどういった構成(分布)になっているかによる。例えば、1位を含めたトップ13人の価値が突出していれば、13番目の選手を指名できる前者のメリットが大きいが、13番目の選手と24番目の選手にそこまで価値の差が無ければ、後者の方が得をするだろう。

つまり、折返し方式は順番を付けなければいけない中で、最大限に平等性を尊重した制度である。したがって、「戦力均衡」の役割を果たしておらず、私は常々現行のドラフト制度はおかしいと思ってきた。(逆指名や自由枠の時代を考えれば遥かにマシだが。。)

3.折り返し方式は止めて、ウェーバー方式を拡大せよ。そして、どこから?

折返し方式を廃止せよ

NPBという興行の発展のために「戦力均衡」を促す仕組みが必要であると考えるならば、ドラフトの折返し方式は廃止し、代わりに下位チームが優遇される仕組みを導入しなければならない。いくつかの案をここでは提示したい。

案1:1位指名から完全ウェーバーに

極端だがまず思いつくのは、現行のくじ引きを廃止し、1巡目から下位チームが粛々と指名をしていくという考えだ。実際にMLBがそうだ。ただ、これはNPBのドラフトの醍醐味である1位のくじ引きのロマン性を完全に捨ててしまうことになるし、6位になることの方が4位になるよりも得が大きくなってしまう。例えばドラフト1位の中でも突出した価値を持つ選手が1名いたら、その選手を指名するために、Bクラスが決まったら早々に最下位を目指すチームが出かねない。

この案は、「戦力均衡」の効果は絶大であるが、デメリットも非常に大きく、現実的ではない。

案2:2位指名から完全ウェーバー方式に

1位指名は現行の制度から変えないが、2位指名以降は順位順に(折り返さずに)実施していくという案だ。したがって、最下位チームは13番目→25番目→37番目の選手を指名し、1位チームは24番目→36番目→48番目の選手を指名していく

この案は、「戦力均衡」の効果が大きく、デメリットも特に無いので、すぐにでも実現すべきであると考える。

案3:ハズレ1位から完全ウェーバー方式に

1位の入札は現行どおりに行うが、くじ引きは一人目の入札までとし、くじ引き後のハズレ1位の指名は順位順に行うという案だ。「戦力均衡」的なメリットとしては、下位チームは優先的に選手を選択できる(外れた場合)こと、またその事により一人目で思い切った入札がしやすいということが挙げられる。これは、くじ引きのロマン性を損なわせず、かつ「戦力均衡」にも絶大な効果をもたらす。また、ドラフト1位指名における戦略性が増し、よりエンターテイメント性が高まる

ただしこの案は、1位指名だけは12球団平等に機会を与える、という「神聖さ」を無くしてしまうので、実現は難しいだろうと思う。

案4:入団に至らなかった選手分の指名権を翌年に(これはあまり戦力均衡とは関係が無いが)

ドラフトでたまに問題になるのが、有望選手が「●●以外から指名されたら入団しません!」と宣言するパターンだ。いわゆる囲い込みというやつである。本人がそう希望するのは自由であるが、ドラフトというルールの中の話である限り、どのチームもその選手を指名する権利がある。

そして実際、その選手の指名を特攻するチームがたまに現れる。入団にこぎつけるパターンもあれば、入団を拒否されることもあるが、入団を拒否された場合にはその順位の指名権を捨てたのと同じである。(意中の球団に入団させなかった、というメリットはあるが。)

そこで、入団拒否が発生した場合には、その分の指名権を翌年に付与すればいいではないかという案を考えたい。例えば、2位で指名した選手に入団を拒否されたら、翌年のドラフトの2巡目の指名権を追加で与える。ただし順番は、12球団が2巡目を指名し終えた後の、13番目の2巡目指名として付与することが現実的だろう。(最後の順番にすることとしないと、敢えて入団を拒否させて来年に指名権をストックしようとするチームが出かねない。)

ちなみに、MLBのドラフトは実際にこの制度が導入されている。不利益を被るチームを作らないためにも、NPBでもすぐにでも導入したら良いのではないかと思う

 

以上、ドラフトの改革案を述べた。少なくとも私は現行のドラフト制度から改善できる点が多いと思っているので、NPBの誰か偉い人がこの記事を読んでくれることがあれば、大変ありがたいことだ。

 

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。