ドラフト・契約更改・FA制度の改革による不平等の解消と移籍の活性化について(2020年1月12日)

今回の記事では、ドラフト→契約更改→FA権の取得までに、在籍する球団の違いにより発生する格差を解消し、さらに移籍の活性化を図るための改革を、一つの案として提案したい。

目次

1.はじめに:プロ野球選手の運命はドラフトで決まるのか
2.どうすれば平等になるか
3.改革の概要
4.FAの人的補償という制度は止めよう
5.最後に(現役ドラフトについて)

1.はじめに:プロ野球選手の運命はドラフトで決まるのか

毎年10月頃に行われるプロ野球ドラフトは、ポストシーズンよりも注目されているのではないか?とさえ思えるような盛り上がりを見せる。特にドラフト1位指名やくじ引きの瞬間は、明暗を左右する瞬間で多くの人がテレビの前で固唾を呑んで見守る。

そんなドラフトで最近はあまり聞かなくなったものの、それでもたまに議論になるのが、「職業選択の自由に反していないか?」という内容だ。(もし誰かが裁判所にこの不平等を訴えたら、一体どのような判決が下されるのだろうか??)

高校生・大学生がドラフト会議で指名されるためにはプロ野球志望届を提出するが、これはあくまでプロ野球の球団で指名されるためのリストに載るための届出であって、特定の球団を希望できるものではない。(社会人等の場合は志望届の提出すら無い。)

どの球団に入るかは、契約金や年俸という金銭面だけでなく、環境面でも大きく影響を与えることに疑いの余地はない。その人のプロ野球人生を左右するものであるので、本当はプロ野球に入る際に球団を選べると望ましいのだが、立地等の諸条件により選択が偏ってしまうことが容易に想像される。もし特定の球団ばかりが志望されることがあると、戦力的に著しい不平等を招くから、現状のようなシステムになっているのはやむを得ないことだろう。

私も現行のシステムは、これはこれでしょうがないと思っているが、それと同時に制度がもたらす不平等(特に人生を左右されるにもかかわらず)を考えると、選手たち(若者たち)は可哀想とか残酷だと思う事もある。そこも含めてのプロ野球人生と言ってしまえばそれまでだが、もっと良いあり方はないものかと思わずにはいられない。

入団する球団の環境がマッチするかどうかは、相性の問題でもありやってみないとわからないことであるから、どうしようもない部分がある。しかし、金銭面の待遇が大きく異なるのは問題であると思う。

極端な仮定の話になるが、ちょっと1軍で活躍したらすぐに年俸1億円をもらえる球団もあれば、一方でいくら活躍してもFAを取るまでは大して年俸が上がらない球団もあるとする。あなたがもしプロ野球球団から指名されるとしたら、どちらの球団に指名されたいだろうか?どちらの球団でも自分の実力さえあればレギュラーになれるとすれば、答えは聞くまでもないだろう。

この極端な例が教えてくれるのは、指名された球団によって(しかもそれはその時の巡り合わせで決まる)、プロ野球人生に格差が生じるということだ。当然だが、そんな格差は初めから存在するべきでは無いと考えるのは自然なことだと思う。

前置きが長くなったが、私が提唱したいのは、そういった不平等を無くすことを始め、諸問題を解決するために、ドラフトからFAまでの制度の改革を図ることだ。

2.どうすれば平等になるか

どうして現行の制度では批判が繰り広げられるのか?

それは、
 ①入団する球団を選べないこと
 ②入団する球団によって待遇が異なること
 ③FA権を取得するまで決して短くない年数がかかるうえに宣言しにくいこと
という3つの理由が挙げられる。仮にこれらの内どれかひとつでも解消されれば、不平等は大きく解消される。

それでは、具体的にこの3つの改善点の中から、どれを解消すればいいのだろうか?

まず、は選択肢として無い。仮に入団する球団を自由に選べたとすると、選手にとって平等でも、球団にとっては不平等も甚だしい。つまり、入団する球団に偏りが生じてしまう。

続いて、はどうだろうか?待遇の基準を統一するということは簡単にできることではないだろうか。同じ量の活躍をした選手が同一待遇になるというのは、ある意味当たり前の事のようにも思う。も同様で、FA制度を変えるだけのことなので、簡単に実行できる。

ということで、②入団後の待遇格差と③FA権の取得と行使についての改善を考えていきたい。つまりは、入団する球団によって待遇の差が生じにくく、FA権を取得・行使しやすくなることで球団を選ぶ権利もある程度保証する改革を提案したい。

3.改革の概要

いきなりではあるが、こういう制度が良いのではないかということを箇条書きで述べていきたい。

  • ドラフトで指名されてからFA権を取るまでの待遇(契約金含む)は、全てNPBが決めることとし12球団統一の基準を適用する。チーム順位、ポストシーズン出場、タイトルボーナスについても、一律の基準をNPBが定める。

  • ただし、NPBが統一の基準を作り年俸を定めるが、例えば声出しや日頃の練習姿勢や細かいサインプレーの評価など、NPB事務局では評価することが困難な事項は各球団がNPB査定に追加して支給してもよいこととする。(ただし、端数部分の切り上げ程度の金額を上限とするようなイメージ)

  • 金額はNPBが定めるが、年俸を支払うのは各球団とする。

  • FA権を取得するまでの昇給・減給の幅については、ある程度の制限を設ける。これはNPB全体での商業規模を超えるような年俸が設定されないようにするためと、12球団が共通して受け入れることのできる基準であることを約束するためである。

これらの制度により、入団後の球団格差が解消されることになる。続いて、FA権の取得に関する部分についてである。

  • FA権を取得するまでの基準は、MLBとほぼ同様に、レギュラークラスの活躍6年間とする。

  • FA権を取得したら、自動でFA(フリーエージェント)となり、12球団および海外球団と自由に交渉ができるようになる。

  • 国内球団間のFA移籍の際の人的補償や金銭補償は全て廃止する。(余談だが、私は人的補償や金銭保証は非常に悪趣味な制度であると思っている。なぜ移籍するときに本人の足枷になるようなものが無ければいけないのか?元の球団にドラフト指名権を追加でプレゼントするとか、NPBから補償金が出るとかではダメなのだろうか?)

  • 一度FA権を取得して契約をした選手との契約期間が終了した場合、その選手は再度FAになる。

ポイントは、FA権を取得したら他の球団と自由に(各種補償を考えないで)交渉することができることだ。つまり、ドラフトで指名されるときに球団を選べない分、6年間一軍レギュラークラスの活躍さえすれば、どの球団とも自由に交渉することができるということだ。

4.この制度が適用されたら

続いて、時系列に沿ってどのように交渉や待遇が行われるかを考えながら、どのような効果が生じるかを考えたい。

4ー1.ドラフト指名→入団時

ドラフト指名の際の順位や年齢により、契約金・年俸が定まる。
この基準はNPBが作成し、自動的に決まる。それ以上でもそれ以下でも交渉は行ってはいけない。

  • 各球団および選手は、金銭的な条件を交渉する必要が一切ないので、契約に関する労力が下がる。

  • どの球団に入ろうが同じなので、平等感が強い。

話は脱線するが、以前にドラフト改革について書いたことがある。この改革も同時に実行したい。戦力均衡に関する内容がほとんどだが、入団拒否が発生した場合の措置についても考えている。
NPBのドラフト改革を考える:「戦力均衡」と「ウェーバー方式」について(2018年10月27日)

4ー2.契約更改

FA権を取得するまでの年俸は、NPBが全て定める。
ただし、自由契約(戦力外通告)は、各球団が自由に決めることとする。

  • 各球団および選手は、金銭的な条件を交渉する必要が一切ないので、契約に関する労力が下がる。日頃の査定の労力も大幅に軽減される。

  • 選手からすると、どの球団に入っていたとしても同じ年俸になっていたはずなので、納得感がある。また、契約更改も形式的なものになるので、負担が少なくなる。

4ー3. FA権取得(レギュラークラスの活躍6年)

FA権を取得すると、所属する球団との契約は解除され、国内外の球団と自由に交渉することができる。契約年数、年俸、契約条件は、交渉の中で自由に決めることができる。

  • 金銭や人的補償が一切ないので、好きに交渉することができる。

  • 自動的にFAになるので、仮に移籍しても、現行のように「裏切り者」のような扱いをされることは考えにくくなる。

  • 選手の流動性が非常に高まり、見ていて飽きにくくなる。

ただ、金満チームが補強しやすくなる事も事実なので、ただ金を持っているだけの球団ばかりが超有力選手を獲得することの無いように、贅沢税を導入する事も重要になる。

ただし、行き過ぎた贅沢税は低待遇化を招くことになるので、どこから贅沢税を課すかは非常に慎重に検討する必要がある。

4ー4.契約年数の満了

所属する球団との契約を満了すると、またFAになり、国内外の球団と自由に交渉できる。

  • FA市場に様々な選手がいるため、補強ポイントを補強しやすくなる。オフシーズンの補強が盛り上がる。

  • ただし、現行の支配下人数枠(70人)は変わらず、引き続き設ける。つまり、FA市場ではありつつも、実際はFAになった選手を12球団で分配するという構図になる。需要の高い選手から高待遇で契約が決まっていくだろう。

5.最後に(現役ドラフトについて)

実は、この記事で述べたFA改革の内容は、ずっと前から(数年前から)漠然と思ってきたものだが、なぜこのタイミングで記事にまとめたのかについて最後に触れておきたいと思う。

何かというと、「現役ドラフト」である。

まず、選手会HP: http://jpbpa.net/transfer/ によると、以下の円グラフのとおり、半数以上のファンが戦力補強の手段として「選手移籍の活性化」と回答したそうだ。私もそう回答するだろう。ただ、「新人選手獲得の自由化」が何を指しているのかは分からないが・・・。

続いての画像はこれも選手会HPからで、移籍の活性化による効果(のひとつ)を説明したもので、私もこれに完全に合意する。(ただ、右側の画像で複数球団が獲得を希望する選手がいないことは、恣意的な印象操作のように思う・・・。)

さらに加えて、選手会HP(国内移籍に関するページ): http://jpbpa.net/transfer/?id=1285571669-687883 でも、

「選手会は、このように選手の流動化を著しく損ない、選手の過大な制約となると共に、有力選手の海外流出による危機が論じられる中で、いたずらに国内球団にも不利益をもたらしているFA補償金を、球界の活性化のために撤廃することを求めています。

と述べられている。私もその主張には賛成である。

しかし、昨今の選手会の動きを見ていると、FA制度の改善ではなく、「現役ドラフトの導入」に専ら執心しているように見える。現役ドラフトの細かい内容はまだ明らかにはなっていないが、最新の案は次のようになっているらしい。

  • 各球団は現役ドラフトの対象者8名を選出し、リストを作成する。したがって、全12球団で96名のリストができる。
  • 各球団は、そのリストの中から選手を指名するが、12球団から指名されるようにする。例えばA球団がB球団から対象選手を指名すると、次の球団はB球団以外から指名する。1巡するまで繰り返し、全12球団が埋もれていた選手を選ぶことになる。

なお、指名を8巡繰り返し、全96名を12球団に分配し直すのかどうかは分からなかった。(支配下人数 の関係で考えると、多分そうなのだと思うが。)

また、その他に気になる点もいくつかある。
本人の希望はどうなるのかという点や、何か問題行動(犯罪)を起こした選手をあえてリストに記載して他球団に押し付けることができる点(トランプのババ抜きみたいになること)などだ。

さて、現役ドラフトが実際にどのような制度になるか、それはそれで楽しみではあるのだが、現役ドラフトより前にFA制度の改革が先ではないのだろうか。これが私が思うことである。

実際にファンが求めるのは、勝ち負けにより直結するような移籍の活性化だ。私も冒頭述べたように、それでこそいわゆるストーブリーグが盛り上がるというものだ。

確かに現役ドラフトのほうが当事者になる選手が多く、選手からするとニーズが高いのは分かるが、よりファン目線での(そして、実際にペナントレースの順位に大きく影響を与える)制度改革はFA改革が欠かせないという、私ならではの主張と問題提起をしたく、このタイミングで記事にした。(というわけで、選手会の関係者の方が読んでくれていれば、一番私の願いが叶ったことになる。)

また特に2019年はFA権を取得した選手の中で行使する選手が少なかった年だったように思う。それでは一体、何のためのFAなのか?残留することが良いこと(当然なこと)という風潮が出来ていないか?という風に少なからず不満のように思っていたことも、動機として大きい。

(終わり)

 

 

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。