導入当初は大混乱だったコリジョンルールも、基準が定まってきたおかげか、昨今では問題になることが非常に少ないと思う。ホームベース付近でのラフプレーを見ることが無くなったし、個人的には”良いルール”と思っている。
しかし、私の中でコリジョンルールの理解が不十分な部分というか、腑に落ちていない部分がある。多くの人にとっても、そんな感じではないだろうか。
そこで私なりに、自分の疑問点を考えたいというのがこの記事の内容だ。
1.まずはじめに:コリジョンルールとは
wikipediaから貼り付けただけだが、以下がコリジョンルールの概要である。
- 得点しようとしている走者が、走路をブロックしていない捕手または野手に接触しようとして、または避けられたにもかかわらず最初から接触をもくろんで、走路を外れることを禁じる。
- ボールを保持していない捕手が、得点しようとしている走者の走路をブロックする行為を禁じる
つまりは、「走者は守備者に当たりに行くな」、「捕手はボールを持っていないのに走路に入るな」というルールだ。
しかし実際は、送球がそれた場合など、やむなく捕手が走路に入ってしまうのはOKとなっており、これに私は気持ち悪さを感じる。そう感じる人は多いのではないか?
2−1.送球がそれたら走路を塞いでもOKというプレー
確かに、送球を捕るのにどうしても走路に入らなければいけないという状況であれば、捕手が走路に入るのは致し方ないと思う。
私がこのルールで不満に思っているのは、「そもそも狙ってそういうところに送球していないか??」と思うプレーをたまに見かけるためである。特に内野バックホームのときなど、そう感じることが多い。そんなときは捕手がいい感じで走者をブロックしたりする。
しかし、「狙ったところから送球が逸れちゃいました。」と野手から言われたらそれまでである。
これが私にはコリジョンルールで、イマイチ納得できないことである。(というか、事実上接触を防げていないではないか、という気持ちになる。)
2−2.では送球がそれた場合には、走者はどうしたらよいのか?
それでは走者は黙って走路をブロックされるしかないのだろうか?
それに対する私の答えというか考えはこうだ: 走者は何も考えず、ただ走路を走れば良い。
つまり、捕手が送球をとるために走路に入ってきたら、遠慮なくぶつかれば良い。コリジョンルール(の概要)を読んでも、走路を走っている走者を罰する記述はどこにもなく、走者は何も悪くないいのだ。
※捕球した捕手が走路上で待ち構えているときはもちろん除く。
そうなると捕手は、①衝突を覚悟で走路に入るか、②走路に入らず送球を捕るか、③送球を見送るか、といった選択を迫られる。
→フィジカルが強い捕手は恐れず走路に入りやすい(①)が、フィジカルが強くない選手は走路に入らず送球を捕球したり(②)、あるいは見送る(③)ようなことになるだろう。その結果、体格の小柄な捕手は減ることになる。(私個人は、今現在あるような「小回りが効く捕手のほうが有利な面が多い」という野球はあまり好ましく無いと思っている。)
3.ケーススタディ:先日のMLBでのマリズニック(走者)とルクロイ(捕手)の衝突
ニュースで見たが、非常に痛ましいプレーになった。Youtubeで動画を検索すると、プレーの動画がアップされているので、見ていただきたい。
https://www.youtube.com/results?search_query=Lucroy+Marisnick
ちょうど昨日、走者マリズニックに対して2試合の出場停止処分と罰金処分が課されたが、本人は異議申し立てを予定しているらしい。(以下はMLB公式)
https://www.mlb.com/news/jake-marisnick-suspended-for-plate-collision
私は、2試合の出場停止と罰金(※金額は非公表)というのは妥当か、むしろ少ないと思う。マリズニックは「衝突するつもりや傷つける意図は全く無かった。」と主張しているようだが、それは当たり前のことだし、そもそも誰しもが分かっている。(そんなやつがいたら永久追放で良い。)
マリズニックのプレーの問題点は、わざわざ走路を避けて走って、捕手に正面からぶつかりにいってしまったことだ。
「捕球の雰囲気を見て捕手が外側で捕ると思い、内側の方に走路をずらした。」ということだが、
- 捕手(ルクロイ)は走路を空けていた。
- 仮に、捕手が捕球の際に走路をふさいだ結果ぶつかることがあっても、それは捕手の責任である。
ということを考えると、走者がちゃんと走路どおりに走らなかったこと(+わざわざ捕手の方向に向かっていったこと)が原因なのだから、当然罰せられるべきだ。
走者がこういうプレーをすることが今後無いようにしないと、ちゃんと走路を空けてプレーしようとする捕手が安心してプレーできなくなる。
4.結論(まとめ)
一応まとめておくと、
- 走者は、基本的に走路を走ることだけを考えれば良い。
- もし、ホームより手前の走路に捕手が送球を捕るために入ってきたら、走者は遠慮なくぶつかればよい。このプレーは走塁妨害にも守備妨害にもならない。
- それで捕手が怪我をしても、走路に入った捕手のプレーの責任である。
というのが個人的な結論だが、果たして正しい理解だろうか。
■ 余談 ■ (ここからが一番面白いかもしれない。)
コリジョンルールをしっかり理解するためには、公認野球規則を読むことが必要になるわけだが、この公認野球規則はHP等で公開されているわけではない。
なんと、1,000円+税で書籍として販売されているのだ。私はこーゆーところはケチなので、もちろん買っていない。
ただ、プロ野球という競技のルールをしっかり伝えるのは、見せる側の義務とも言えないだろうか?それが1,000円とはいえ、有料なのは果たしてどうなのか。プレーする選手には公認野球規則は間違いなく配布されているはずだが、見る側にだって公開されていたって良いのではないだろうか。
例えば、日本国憲法を国民が読むのにお金がかかるということがあるだろうか。刑法や民法だってそうだ。
こう言うと一部の方は、「またここの管理人は、理屈モンスターみたいなことを言って・・・。」と思われるかもしれないが、MLBでは以下のとおり実際にオフィシャルルールを公開されている。(全188ページのPDFファイル)
https://content.mlb.com/documents/2/2/4/305750224/2019_Official_Baseball_Rules_FINAL_.pdf
これはいたって自然なことだと思うのだが、NPBはどういう考えなのだろうか。。
2019年8月20日追記
NPBのホームページで、基準の適用を明確にアナウンスしていたときの記事を見つけた。http://npb.jp/npb/2016rules_2.html
以下に(ほぼ)原文まま載せておく。
走者が明らかに守備者に向かい起きた本塁での衝突プレイや、守備者が明らかに走者の走路を妨害して起きた本塁でのプレイ(衝突を含む)の場合に、本規則を適用する。
6.01(i)項「本塁での衝突プレイ」について
- 規則(条文)の変更はありません。
(1)捕手の立つ位置は基本的に本塁の前。
(2)走者は守備者に体当たりをしない。
(3)守備者は走者の走路をふさがない、ブロックをしない。
*これらについては今まで通りです。 - 本塁上のプレイで起きた捕手のブロック行為については、本規則を厳格に適用する。
- 送球がそれて守備者が走路に入らずには守備できなかった、および走者との接触が避けられなかったと審判員が判断した場合は、本規則を適用しない。
- 衝突がないプレイでも、捕手の立つ位置によっては、警告を与える場合がある。
ということで、やはり走者はただ走者を走れば良いのだな。仮に捕手が送球を捕るために走路にやむなく入ってきたら、遠慮なく体当たりをしてもOKなのだ。
「コリジョンルールについて:走者は走路を走っていればよし(2019年7月13日)」への17件のフィードバック