ロシアによるウクライナ侵攻が始まって、もう2ヶ月半になる。キーウ(キエフ)がすぐ陥落するのではないかという当初のロシアのあまりに楽観的な見込みは外れ、泥沼化しているように見える。主戦場がウクライナ東部になり、ロシアが実質的に支配する地域が広まっているものの、終わりが見えない(何をもって終わりが来るのか)という状況だ。
ウクライナの人口は約4,000万人らしいが、国外への難民は800万人に昇ると言われている。相当な規模であり、そうした難民の受け入れも当然ながら各国の負担となる。この紛争が長期化すればするほど、そういった世界中への悪影響が強まっていく。
ロシアもウクライナも、穀物の生産量が非常に多い国である。私がネットでさっと調べた情報だと、穀物の輸出額は、ロシアが世界で4位、ウクライナが5位であるそうだ。特にヨーロッパ、中東方面での食糧状況の不安定化が懸念される。
こうした状況の中、いくつか思うことを書いていきたい。なお、私は専門家でもなんでもないので、あくまで以下の内容は個人的な妄想である。
●何をもって終わりになるのか?
本来のロシアの狙いはウクライナに新ロシア政権を樹立させることだったろうが、その目的はもう叶いそうにない。現在の戦況を見ると、ロシアとしての目標(落とし所)は、NATO加盟、EU加盟をしないことを約束させること、侵攻前に自分たちが国家承認した「ドネツク人民共和国」および「ルガンスク人民共和国」をウクライナに国家承認させることくらいのものだろうか。
だが、西側諸国の支援がある中で、ロシア軍撤退の見返りとしてそのいずれを提案されてもウクライナ政府は呑みそうにない。ウクライナ政府としては、長期戦になればなるほど有利になるので、どんどん戦況を長引かせ、よりロシア不利な状況で撤退に追い込みたい。そして、国際世論を味方にロシアに多額の賠償金を請求し、経済復興を図りたいところだろう。
このように、ロシアが納得する戦果をあげて撤退するというシナリオが見えないし、また仮に撤退してもそれで一件落着という話でも全くないので、世界情勢の不安定化がどんどん強まることが懸念される。特に、経済制裁は西側諸国にとって、その「戦果」を上げるまでは解除されないだろう。
●世界から「問題児」を取り除く方向になるのではないか。
今回の件で、「ロシアは世界の問題児である」という認識を持った国が非常に増えたと思われる。この問題児は今、西側諸国による経済制裁を受けており、果たしていつまで耐えられるのかという状況(耐えれば耐えるほど失うものが大きい)だが、仮にロシアが今から頭を下げて撤退したとして、今までと同じロシアでいられるのだろうか?
世界各国は、この問題児が大国であり続け、世界のエネルギー資源や食糧のうち少なくない割合を握り続けることを、許さないと思う。プーチンの失脚(体制転換)は当然のこととし、賠償金支払、ロシア分割、一定量のエネルギー無償提供、領土割譲、核放棄なども視野に入る。
つまり、この侵攻の終結後に、ウクライナだけでなく、経済制裁を行うことで自国にも痛みを伴った各国が、ロシアに損賠賠償請求を行うというシナリオだ。ロシアからすれば、それを支払うだけの能力はないので、プーチンが失脚し、国家体制を新たにすることで世界各国に納得してもらおうとするだろう。場合によっては国名を改めるくらいするかもしれない。
それでも、納得する国はどこにもないと思われるので、やはり賠償金などの見返りが必要になる。その見返りの候補は、先述の通り、以下のようなものになるのではないか。ただし、あまりに強すぎる要求はロシアの反発を招く可能性に強く留意しなければならない。
・ロシア分割
→複数の国に分割することで、小国化を図る。ただ、これはあまりに体制の変化が大きすぎる割に、実態はあまり変わらない可能性もあり、様々な視点から現実的ではないように思える。
・エネルギー無償提供
→賠償金に相当するような、エネルギー資源の無償提供を約束させるものだ。特に一部のヨーロッパ諸国からすれば、ロシアにエネルギー源という生命線を握られている状態は何としても改善しなければならないわけで、そのロシアに無償提供を約束させるのだ。それと同時に、長期的なロシアへのエネルギー依存から脱却を進めるという算段だ。
・領土割譲
→金でもなくエネルギーでもなく、領土で支払え、というものだ。これは非常に過激に思えるが、ロシアという問題児を弱体化させるのに非常に効果的であるように思える。ロシアと国境を接する、ウクライナ、アメリカ、日本などがこれを主張するかもしれない。
・核放棄
→「この、世界の問題児が核を保有することがあって良いのか?」というロジックで、核放棄をロシアに迫るシナリオだ。なかなか有り得そうにない話だし、ロシアからすればそうなるくらいなら第3次世界対戦を引き起こすかもしれない。ただ現実的に、核軍縮の加速がロシアで進むことになるのではないかと思う。
●中国どうなる?
今回のウクライナ紛争で、一番困っているのが中国ではないか。世界の多くの国が「中国はロシアという問題児のお友達国家」と思っており、これは大きな信頼低下と場合によっては孤立を招く。中国としても今回のロシアの侵攻は「何をやってくれているんだ」という感覚に違いない。
紛争の終結後、ロシアが西側諸国に弱体化させられるのが確定的とも思える状況で、ロシアというパートナーを実質的に失うか、あるいはボロボロになったロシアを抱えながら、アメリカと覇権争いをしなければならない。
そもそも、ウクライナ侵攻の前は北京オリンピックが開催されていたものの、世界中が中国によるウイグル人弾圧を問題視していたような状況であった。それだけであれば、そこまで特にヨーロッパの西側諸国からそこまで距離を置かれることもなかっただろうが、今回のウクライナ紛争で、「中国もロシアと同類の問題児であり、距離を取らなければ」という認識が強まってしまった。
西側諸国からすれば、このウクライナ紛争が片付いた後は、「次の問題児である中国」にどう対処するかを考えることになる。(そして、ロシアが片付けば中国に注力しやすい。)
●エネルギー戦略の見直し
ロシアにエネルギーを依存すること、引いては特定の国に何かを依存することのリスクを、改めて西側諸国は痛感している。理想はエネルギー資源を自国で確保することだが、それができなくとも調達先を分散する必要がある。
電力確保のストラテジーも見直しが進むだろう。なお、私は「原子力発電はリスクも有りつつ、環境的にクリーンで持続可能な発電方法と言えるので、もっと推進すべきだ」とずっと言い続けてきた。(このブログに書いたことは一度もなかったと思う。)東日本大震災の直後もそのように言っていたので、そのときは周りから白い目というか「変わっているね」というような目で見られたものだ。
●自国の安全保障・食糧保障
今回のウクライナ侵攻は、国境を接する国がいきなり侵攻してくる可能性を平和ボケしていた世界各国に認識させた。どうやって自国を守るのか、抑止を働かせるのか、同盟国を見つけるのか、といったことを否が応でも考えていかなければならない。
また、有事の際に食糧を確保することも非常に重要である。いくら仲の良い同盟国がいたとしても、助けてくれるのには限度がある。「自国以上に重要なパートナー国」など存在しないからだ。だから、最終的には自国だけで国民全員が食っていける、生活していけることが非常に重要になる。
(まとめ)
今後の国家戦略に活かしていくような気づきを今回の件で得なければならないし、また自国がどう利を得るかを考えなければならない。国民全般も平和というのは当たり前の話ではない、ということを改めて認識しなければならない。