捕手のリードを評価するにはどうしたらよいか:ランダム配球のすすめ(2019年6月17日)

捕手の能力を語る上で「リード」は切っても切り離せないテーマだが、リードの良し悪しを明確に測る指標は世の中に私の知る限り発明されていない。

また、「リードの良し悪しなんて存在しない」という極端な意見(つまり、ピッチャーの投げるボールが全てという意見)も世の中にあるようが、多くの人は「リードの良し悪しは存在する」と思っているはずだ。かく言う私も、「リードの良し悪しは存在する」と断言する立場だ。

それは、実際に抑えた球や打たれた球を見て「やっぱりね」と思うからでは決してなく、そもそもの投手有利なカウントの作り方・初球の入り方・配球の単調さなどを見て、「これはお粗末だなあ」と感じることが少なくとも体感上それなりにあることが理由である。

ちなみに、逆に「これは良い配球だ」と思うことは私の場合、比較的少ない。何故かと言うと、そもそも投手が捕手の構え通りに投げきれないと、配球を語るという土俵に上がることがまずできないからだ。(捕手の構え通りに投げきれなかった時点で、投手の責任が発生すると感じてしまう。)

と、話が脱線しかけたところで、いかにして「良いリード・悪いリード」を評価するかを考えよう。

方法1.アンケート

物事を評価するのに有効な方法は、数字(統計)であるが、一番手っ取り早い方法はアンケートをとることである。しかし、人間の主観がいくら重なったところでそれが真に正しい評価にはなるとは限らない。

また、打者からすると、投げ損なったボールなのか、それとも捕手の構え通りのボールなのかは必ずしも明確にインプットされる訳ではないし、投手が自主的にサインに首を振って投げたのか首を振らされたのかも明らかでない。

したがって、アンケートは良い方法ではない。何より、記者の投票の結果で決まるゴールデングラブ賞の毎年の面子を見れば、印象は偏ってしまう可能性が高く、また適当であることがよく分かる。

方法2.サイコロに配球を委ねたとき:「ランダム配球」と比べる

私が真剣に提案したい方法は、以下である。

何試合か、サイコロ(乱数)で全ての配球を決めることにする。つまり、捕手は文字通り、捕る人に徹する。そして、そのときの結果と、捕手(人間)が考えてリードしたときとで投手指標に差が生まれるかを観察するのだ。今後の説明の便宜上、この方法を「ランダム配球」と名付けよう。

  • 打者のコース別・球種別OPS、投手のコース別・球種別被OPSをもとに、打者・投手ごとにどのボールをどれくらいの割合で投げるかを試合前に決めておく。(これは、機械的にできるはずだ。)
  • ベンチでサイコロを振り(あるいはiPadで乱数を生成し)、投げる球種とコースを伝達する。
  • 細かいコースの加減は投手が決める。(たとえば、追い込む前はそこまで厳しいコースは狙わず、追い込んだらなるべく厳しいコースに投げる、など)

もしこの「ランダム配球」を実践して、人間の捕手が考えてリードしたときよりも良い結果が得られれば、捕手はリードを考えるという作業から解放されることになる。加えて、「リードが悪い」と批判されることもないし、試合前に対戦相手のビデオを見る必要もない。全てはコンピュータが、決まったアルゴリズムで配球の割合を決めてくれるのだ。

更に踏み込んで「良いリード」と「悪いリード」を、「ランダム配球」を基準として定義することを考える。つまり、

「良いリード」 = 「ランダム配球」のときよりも被OPSが低い。
「悪いリード」 = 「ランダム配球」のときよりも被OPSが高い。

と定義する。(被OPSとしたのは単純に好みの問題で、投手成績の指標であれば何でも良いと思う。WHIPや被打率を使いたい人もいるだろう。)

どこかのチームで「ランダム配球」を1ヶ月くらい導入してみてほしい

統計的に比較することが大事だから、「ランダム配球」のサンプルは1ヶ月分は欲しい。

8月くらいでAクラスの可能性が消滅したチームがあれば、残りの試合で「ランダム配球」を導入してほしい。捕手もその間、配球のことを全く考えないで済むので、打撃や他の守備に集中することができるというメリットもある。(配球については、シーズンオフにビデオを見ながら勉強すればよい。)

その結果、人間が考える配球にどれだけの意味があるのか(あるいは逆に悪効果なのか)が初めて理解できることになる。

さて、私の好奇心を満たしてくれるチームが現れることはあるだろうか・・・。

 

 

1件のコメント

  1. 管理人さんお疲れ様です。
    面白い考察をありがとうございます。
    確かに、配球はランダムに決める、というのも面白いかもしれないですね。

    今野球界で、データではなく感覚で語られているものの代表的なものがリードだと思います。

    他分野ですが、AI同士の将棋が、人間同士の形ではあまり見られないコマ動きで進められるのが
    固定概念から抜け出すのが容易ではない人間の考えをAIが凌駕する代表だはないでしょうか。
    個人的には、AIに配球を考えさせて、どんな結果が出るのか、見てみたいです。
    (投手打者の得意コースだけでなく、見逃し方なんかもAIが分析する)

    今のリードは、多かれ少なかれ、抑えることと並行して、打たれたときに悔いを残さないこと、という
    直接抑えることと関係ない要素が入っているのがリードを硬直化させているのかと思います。

    ランダム実験、AI実験をするには、そのあたり生活がかかっている投手に、そのリードが効果がある、という
    証拠を見せれば面白いかもしれないですね。
    メジャーの極端な守備位置の導入経過と同じく、いつの間にか常識が入れ替わるかもしれないですね。

    (だからこそ、オリックスをグーグルが買収して、どんな野球をして、阪神以外不毛の地でどんな経営するのか、めちゃくちゃ見てみたいです。
    ほんとにAI野球やってくれないですかね…)

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