ペナントレースでの「理想の勝ち方」を考える(2019年6月16日)

この記事でいう「理想の勝ち方」は、「全力をあげて勝ちにいく試合」と「負けてもいい試合」を明確にし、一年のペナントレースで最適な力配分を明確にすることである。

つまり、以下で具体的に述べるように、同じ1試合であっても重み(価値)が異なるから、ただ漫然と143試合を同じようなペースで戦うのは悪手であることを明確に認識し、1年の戦い方をしっかりと考えなければいけないということだ。

1.ホームとビジターは、ホームで勝つのが得である。

もちろん何の試合であっても勝つのが一番いいのだが、ホームとビジターの試合どちらかでしか勝てないとするならば、ホームで勝ったほうが得である。以下に理由を述べる。

1−1.ビジターで負けるときは9回に投手が投げないで済む

ホームの試合は、展開によらず、必ず9回表を投手が投げる必要がある。しかしビジターの試合は、負け試合では9回裏を投げる必要がない。したがって、ビジターで負けるのは、9回裏の1イニング分投手の負担が軽くなる。

別の言い方をすると、負けの総数が決まっているとして、その負けをなるべくビジターの試合に配分した方が負担が少なくなる、ということだ。

1−2.興行的にもホームで勝つほうがメリットが大きい

ホームの試合の方が、自チームのファンは多いだろう。それならば、ホームの試合で勝ったほうが興行的にメリットが大きいのは明白である。

2.交流戦は重要ではない

交流戦はペナントレースの力の入れどころではない。シーズンの分かれ目でも何でもなく、5分勝ち程度でよい。

2−1.リーグ戦は「ゼロサムゲーム」であるが、交流戦はそうではない。

リーグ内の対戦はいわゆる「ゼロサムゲーム」である。つまり、リーグ内の勝数と敗数がはじめから決まっており、それをどう食い合うかが対戦結果である。

別の見方をすると、リーグ内の対戦は「勝つ」=「同リーグの相手を負かす」であるが、交流戦では「勝っても、同リーグの競争相手の勝ち負けに影響がない」のである。

したがって、自分の勝ちが相手の負けにつながるリーグ戦のほうが、価値が高い。

2−2.具体例

①交流戦18試合で全勝する場合(左)と、②リーグ戦18試合で全勝する場合(右)を比べてみる。緑で塗ったのが、同リーグのチームである。

①交流戦18試合で全勝する場合(左)
残りの11チームが全て勝率5割だとして、同リーグのチームは全て9勝9敗になることが期待される。計算の結果、同リーグのチームに対して45ゲームが開くことになる。

②リーグ戦18試合で全勝する場合(右)
自チームは同リーグ内の対戦相手に平均3.6勝することになる。その他のチームの勝敗が完全に五分五分だとして、同リーグのチームに対して54ゲームが開くことになる。

①、②を比較すると、②の方が同リーグ(競合相手)を多く負かしているのだから、その分多くの差をつけることができていることがわかる。具体的には、1.2倍の差がある。

2−3.注意点:「一人負け」はよろしくない

ただし、以下の表のように、同一リーグの他のチームが馬鹿勝ちしているのに、自チームだけ勝てないのは圧倒的にマイナスな状況である。つまり交流戦は、極端な場合一人負け(一人勝ち)もありえるから、その意味で、無限に可能性がある。だから、完全に手を抜くのは絶対に誤りであり、「いつもどおりに戦う」のがあるべき姿勢だ。

つまり交流戦は、「そんなに頑張るところではない」くらいに捉えるべきである。(交流戦の優勝賞金=2019年の場合3000万円は非常に大きいが・・・)

 

3.シーズン序盤にピークを持ってくるのは悪手

「シーズン序盤」と「シーズン中盤・終盤」を比較したとき、以下の理由から「シーズン序盤」の方が価値が低い。

 

3−1.ポストシーズンでの調子を考える必要がある

そもそもシーズン序盤から飛ばしての「先行逃げ切り」は、ポストシーズンで勝たなければいけないという現在の仕組みを考えたときに下策である。

下降線よりも、上昇線でポストシーズンを迎えるほうが100倍良い。つまり、中盤・終盤と、段々と調子を上げていきポストシーズンを良い状態で迎えたほうが得に決まっている。

3−2.追い上げる方が精神的に楽らしい

よく効くのが、「追い上げられるのと追い上げるのでは、追い上げるほうがずっと気持ち的に楽」ということだ。私はあまり当事者になったことがないので分からないが、精神的に楽な方が良いに決まっている。

3−3.オールスターにはなるべく出ない方が良い

シーズン序盤から好成績を残すと、オールスターに選ばれやすくなる。

しかし、オールスターはシーズンの結果には直結しない興行であり、切り捨てた言い方をしてしまうと、ただのチャリティであり、負担でしかない。

特に先発投手であれば十分な休養が無いまま投げなくてはいけないことが多いし、前後のローテーションに悪影響が出ることも多い。中継ぎ投手も、オールスターで投げなければいけないのと、その期間投げないで済むのとでは非常に大きな差がある。野手も同様である。

したがって、シーズン序盤(オールスター投票は6月中旬が締め切り)はそこそこの成績で、後半から成績を伸ばしていくほうが、オールスターに選ばれにくいので得である。

4.競合相手に勝つことが重要

将来的に順位を争うことになるチームを負かす事が大事である。

たとえば、「このチームと3位を争うことになりそうだ。」と思えば、シーズン序盤であっても、そのチーム相手の対戦では投手をつぎ込むなど、本気を出した方が良い。

一方で、「このチームとは順位は競わない」と思うのであれば、そのチームとの試合は全力の出しどころではない。

5.まとめ

以上をまとめると、以下のようにシーズンの戦い方を考えるべきである。

  • 交流戦終了(シーズンの約半分を消化)までは勝率5割で、そこから調子を上げるくらいでよい。
  • ただし、順位を競うことになるチームには、常にそのときの全力で当たるべき。
  • 「ホームの勝てそうな試合」と「ビジターの勝てそうな試合」では、ビジターの試合の方が価値が低い。

6.余談(あとがき)

この記事を書こうと思ったのは、交流戦のたびに「シーズンを左右する戦い」というようなフレーズを聞くが、「そんなことは全然無いよね?」と常日頃から思っていたからである。

2018年のオリックスなどは最悪で、交流戦は2位と頑張ったものの、そこから調子を落とし、シーズンはパ4位であった。特に、交流戦で中継ぎ投手を大きく酷使した分、そこから多くの投手が調子を落とした。結果、残りのリーグ戦を優位に戦うことができなかった。

あと、完全に蛇足かつ極端な話にはなるが、交流戦では対戦相手同士が談合することがあり得る。「3試合中2試合は1勝1敗で手を打ち、残りの1試合だけ真剣勝負をしましょう。」という内容だ。特に実力差が大きくないチーム間の対戦では、こうなることが有用な戦略になりうるので、NPBは目を光らせるべきだ。

 

ペナントレースでの「理想の勝ち方」を考える(2019年6月16日)」への16件のフィードバック

  1. 管理人さんこんにちは。
    ペナントレースの考察の記事、興味深く読ませていただきました。
    去年のシーズンを見ると、ソフトバンクなどはまさに夏から調子を上げて、CS、日本シリーズも圧勝しましたね。
    勝ち方を知っているチームと思います。
    (個人的にはソフトバンクは、FA以上に外国人に金をかけて、(時には強奪して)中継ぎ、抑えを
    彼らに任せているところにしたたかさを感じます。)

    交流戦に関しては、確かにシーズンを左右するというのは違うのかもしれないですね。
    交流戦をこの時期にやるのも、優勝争いの中で直接対決がない、というのを避けている
    のでしょう。

    ただし、交流戦には2つ大きな要素があるとわたしは考えています。
    1つ目は5月末から6月にかけて開催されるという時期です。
    一般的には、4、5月にかけての試し起用が一巡し、チームの形(後ろの投手の役割分担等)
    が固まり、また、疲労による不調者も出にくい時期であることから、
    交流戦のときがもっとも各チーム充実した戦力で戦える傾向にあると考えられます。

    そのため、交流戦のときに強いチームは、戦力が整っているチームと言えますし、
    結果として交流戦の勝敗は順位に直結しやすいのだと思います。
    そこから交流戦を制するものはリーグを制す、という傾向が生まれたのではないでしょうか。

    また、これは適切な表現かわかりませんが、ここ数年交流戦や日本シリーズの成績から、
    パ・リーグがセ・リーグより勝ち越す傾向がある、というのは如実にあらわれていると思います。

    検証していないのでなんとも言えないのですが、セ・リーグの勝率530くらいとパ・リーグの勝率
    470くらいが同じ戦力ではないでしょうか。(あくまで感覚ですが)
    まあ、リーグ全体の格差というよりは、ソフトバンクの存在が大きすぎるのだと思いますが。

    ただ、結果として、パ・リーグが平均3・5勝くらいするため、パのチームにとっては
    交流戦で負けるのはある意味直接対決で負けるよりダメージが大きい、となってしまっていると思います。
    (同一リーグなら3チームが負けますが、交流戦ではだいたい2.5チームくらいしか負けないので、1敗のダメージが大きくなります)

    もちろん、交流戦にすべてかけて全試合勝ちに行く、とかは論外ですが、
    結果として、ある意味交流戦の重要性がリーグより大きくなっているのはその辺があるのかとわたしは思います。

    いつも長文すみません、。楽しい検証をありがとうございました。

    (余談ですが、福良GMがキャッチャーのトレードを画策しているとか・・・
    また2軍戦を行うためというしょうもない理由で、Tや松葉など貴重な
    戦力を失うのでは、という心配でいっぱいです・・・)

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