FA制度の抜け穴:投手にFA権を取得させない方法から、FA制度の改善を考える(2018年12月23日)

記事タイトルが非常に邪悪な感じ

「投手にFA権を取得させないなんて、なぜそんな邪悪な記事を書くのか!?」とドン引きの人もいるかもしれないが、私としては単に投手にFA権を取得させない方法を思いついたので書きたい、というただそれだけのことである。つまり、純粋な好奇心から書くだけであり、日本国憲法で保証されている「表現の自由」に当たると思っている。

また、野手ではなく、「投手にFA権を取得させない」と書いてある時点で、私が何を言わんとしているかピンと来た人もいるかもしれないが、FAに関する様々なルールを考慮しながら執筆しているので、是非読んでいただきたい。

1.はじめに:FA権の取得ルールについて

FA権の取得に関するルールをまずまとめるが、いかんせん長いので、ある程度知っている方は読み飛ばしていただいて問題ないと思う。ただし、あとで細かな点も含めて参照するので、青字の部分だけは抑えておいてもらいたい。

以下、NPBのホームページより抜粋。
http://npb.jp/announcement/2018/fa_about.html

FAになるには

セ、パ各リーグの選手権試合期間中に145日以上出場選手登録されたシーズンを1シーズンとして計算し、合計8シーズンに達したときに「国内FA」となる資格を取得する。
(ただし、2007年以降のドラフトで入団した大学生・社会人選手は、7シーズンで資格を取得する。)

出場選手登録日数が145日に満たないシーズンがある場合は、それらのシーズンの出場選手登録日数をすべて合算し、145日に達したものを1シーズンとして計算する。

①故障者特例措置

前年度に出場登録日数145日を満たした選手が、2月1日から11月30日までの間に発生したグラウンド上での故障、けがで登録抹消となったため、登録日数が145日に満たなかった場合、特例措置適用の対象となる。 加算はけがで登録抹消となった日から2軍公式戦に出場した日までとし、最大で60日までとする。

②投手の登録日数加算に関する特例措置

先発ローテーション投手と球団が判断した投手については、開幕日から7日以内に出場選手登録された場合は、開幕日から登録されたものとみなす。 先発ローテーション投手と球団が判断した投手が、オールスターゲーム第1戦予定日の7日前以降に登録抹消され、かつオールスターゲーム最終戦後7日以内に再登録された場合は、抹消された日から再登録前日までを登録日数に算入する。

③CS出場選手の特例措置

これはNPBのホームページには記載されていないのだが、
・レギュラーシーズン最終戦からCS初戦(そのチームにとっての)が10日以上空くとき、
・レギューラーシーズン最終戦後に全選手が自動的に登録抹消になり、
・CSで再登録された選手については、抹消期間も登録日数に含める。
というルールが有る。

参考)https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2011/10/04/kiji/K20111004001756550.html

2.どうやって投手にFA権を取得させないようにするのか?

端的に述べると、「先発投手は登板後、即抹消し、10日後に再登録するというローテーションを組めば良い。つまり、中10日ローテーションで回す。」というのが私の思いついた方法だ。(それが色々な面で実際にできるかどうかは考えない。)

これを思いついたきっかけから述べたいのだが、先発投手というのは週に1回しか登板しない。もし先発投手の選手登録を、登板するたびに抹消することができたら、一軍登録枠に余裕が生まれ、野手や中継ぎ投手をより多く登録できるのではないか、と思ったのである。

実際、上記の方法を実行すれば、先発投手の枠は常に1名で済むので、残りの27名をふんだんに使用することができる。
しかしながら実際は、現在のNPBでは中6日等が主流なので、先発投手は一軍に常に登録されている。ローテーションを守り続ければ、約5ヶ月で1シーズン分の登録日数(145日)を満たすことができる。

また、中10日ローテは、より正確に言うと「先発投手にFA権利を取得させない方法」ということになるが、あとで述べるように投手一般に取得させない方法として発展させて考える。

3.中10日ローテで1シーズンで何日の登録になるのか?

先発投手は登板する日しか登録されないことになるので、特例等を何も考えなければ、1シーズン(3月下旬〜10月初旬、190日)を11で割って、「18日」になる。日程の関係での多少の増減を考えると「16日〜20日」ということになるだろう。

ただし、CSでの登録日数もFA登録日数にカウントされるので、ちゃんと考える必要がある。CSでも悠長に先発投手は即抹消、とできたらよいのだが、さすがにスクランブル登板や、登板間隔を詰めて中6日で投げることなどを考えると、登録したままにならざるを得ないかもしれない。その場合、CS第1ステージ、第2ステージの期間中の登録を考えて、「+10日」が見込める。

したがって、1シーズンの純粋な登録日数は「26日〜30日」ということになる。

4.特例ルールによる増分を考える

4−1.①故障者特例措置

前年に145日分の登録を満たした選手が、この措置を利用すれば、「+60日」の登録でカウントされることになる。ただ、その間は当然一軍に登録されていないので、5登板分、すなわち「−5日」の補正も必要になる。

したがって、「+55日」ということになる。ただ、注意して欲しいのが、前年に145日分の登録を満たさないとこの特例の対象にならない、ということである。

4−2.②投手の登録日数加算に関する特例措置

「開幕日から7日以内に登録された先発ローテーション投手について、開幕日から登録されたものとして扱う」というルールを考える。「先発ローテーションではありません。」と言い張るのは流石に難しいので、これは守るしかない。したがって、開幕7日目で登録された投手の場合を考えて、最大で「+6日」(開幕日〜開幕6日目)の補正が必要になる。

オールスター前後の7日間ルールのほうが厄介だ。オールスター期間前後の7日間で抹消→登録を繰り返すと、抹消期間もFA取得日数に加算されてしまう。つまり、最大で「+14日」の増加となる。

ちなみに、以下の画像からも分かる通り、中10日ローテを組んだとき、この措置が適用される可能性がある投手は、せいぜい1名である。

2018年7月の日程

4−3.③CS出場選手の特例措置

これが最も回避するのが簡単で、シーズン最終戦には、CSで投げそうな投手は登録しなければよいのだ。つまり、ほとんどの場合、シーズン最終戦は順位に影響を与えないであろうから、CSで登板しなそうな若手のホープに登板機会を与えればよいのだ。

あるいは、すでに1シーズン145日をそのタイミングで満たした投手を登板させるとか、やりようはいくらでもある。(ただ、最終戦がシーズン順位を分けるような場合には、そうも言ってられないだろう。)

5.それで結局、最大で何日の登録になるのか?

以上、補正も考えると、1シーズンの登録日数は「最大でも105日」ということになる。つまり、FAにおける1年分の登録(145日)を満たすのに、2シーズンかかる。

ただし、「最大でも」と書いたとおり、CSにも出場し、種々の特例措置をモリモリに乗せた場合で「105日」である。通常適用になるのは開幕時の特例措置くらいだろうから、CSに出場できなかった場合、1シーズンの登録日数は「26日」にしかならない。CSに出場した場合で「36日」である。これでは145日に達するまでに、5シーズンもかかる。

つまり、中10日ローテを実現するだけで、先発投手は入団したチームに骨を埋めるしか選択肢がなくなってしまうのだ。

6.中継ぎ投手はどうするか

中継ぎ投手は登板頻度を考えると、当然のことながら、1シーズンをフルで登録する必要があるので、1シーズンで145日を優に満たすし、小細工はできない。

「それでは面白くない!」と(私のように)思われるだろうか。もしそうであれば、例えばあと2シーズンでFA権取得というようなタイミングで、先発に転向させる、という選択を取ればよいのだ。

先発転向1年目は故障者特例もありえるので、100日レベルの日数になるかもしれないが、翌年は(前年と合わせて)145日に達しないように調整して起用することが容易に可能である。したがって、先発転向3シーズン目でようやく145日に達する。そして、次の145日に達するまで4、5シーズンかかる。

つまり、中継ぎ時代の5〜6シーズンから、更に先発投手としての7〜8シーズンが経って、初めてFA権を獲得できることになるわけである。むしろ、そんな長期に渡って活躍できる投手のほうがレアであるし、そんな投手がいた場合であっても先発転向を1、2シーズン早めさえすれば、それだけでもうFA権は取得できなくなるだろう。

したがって、投手はFA権を取得することが事実上できなくする、という邪悪なことが可能である。

7.予想される反発

7年とか8年、密なシーズンを過ごしてFAで退団される場合と、入団してから引退するまで、ずっと毎年100イニングを投げ続けてもらう場合で、どちらの方がコスパが高いだろうか。私は間違いなく後者だと思う。だとすれば、球団が取るべき選択は、中10日ローテなのだろうか?

当たり前のことであるが、こんなことを実際にやる球団がいたら大問題になる。(後述するように、本当に問題があるのはルールの方であるが。)おそらく、ドラフトで指名された投手は入団を拒否するか、契約書に加筆しようとするだろう。

また、今いる先発投手陣はストライキをするだろう。あるいは、全員が中継ぎ転向を申し出て、全員が中2日・3イニングというようなローテーションが出来上がるかもしれない。

したがって、露骨に中10日ローテでの登板を強いることは、現実的にありえない。

8.中10日ローテを実行する大義名分

ということは、実際に実施する場合、問題にならない(反発を受けない)ように、もっともらしい理由(建前)を掲げてやる、ということが重要である。つまり、

・「ちょっとフォームが崩れていそうに見える」
・「調子が今ひとつ上がっていない」
・「寒い時期だから間隔を空けたほうが良い」
・「故障明けだから、中10日でしっかりコンディションを整えながら登板して欲しい」
・「もう順位が確定したから、来季に向けてコンディションを整えてもらうためにも、残りは中10日で登板してほしい。若手にも先発のチャンスを与えたい。」

というような理由にかこつけて、中10日での登板を部分的かつ積極的に取り入れるのだ。シーズンの4ヶ月間を中6日で、残りの2ヶ月間を中10日登板としただけで、145日登録には届かなくなるだろう。もし144日登録でシーズンが終わったら、翌シーズンでようやく145日に到達することとなり、FA取得に通常の倍の時間がかかるわけだ。

9.これを防ぐために:そもそも145日という「日数ルール」は適切なのか

以上で考察したように、現状のルールでは「投手にFA権を取得させない」ということが実際にできてしまう。それをしようとする人が責められるべきなのではなく、そんなルールを許容しているNPBと選手会の罪なのだ。「登録日数145日で1年分とカウントする」というルールに疑問を持ち、早急に整備すべきである。

中6日(より正確に言うと中9日以下)でコンスタントにローテーションを回り続ければ、1シーズンで容易に145日登録を満たすのに、中10日ローテーションだと145日登録に到達するのに5シーズンもかかる。

働いている貢献度の総量を比較したうえで、FA権獲得までの時間が5倍も異なってよい、ということが許されるだろうか。私はありえないと思う。したがって、「日数」だけでなく、より多角的な評価が必須であると主張したい。

例えばであるが、

①「登録日数」×0.5  ※上限なし
②「登板数」×3(投手のみ)
③「出場数」×1.5(野手のみ)
④「登板イニング数」(投手のみ)

の累積値が1600を超えたら国内FA権を取得する、というようなルールはどうだろうか。(数字は適当)

例えば中10日ローテで投げる先発投手でも、多い場合で1シーズンで18試合に登板するとして、①=9、②=54、④=100と、1シーズン合計が163になる。これを10年続ければFAである。

一方で中6日でローテーションを守る場合、26試合先発として、①=95、②=78、④=170と、1シーズン合計が343となり、5年でFAになる。

この例は私が10分程度で考えたものなので適切とは決して言えないが、要は私が言いたいのは「働いた総量を離散的すぎない方法で、適切な尺度で評価すべきではないか」ということだ。

以上のような視点から、現行のFA制度に対して疑問を呈してくれる人が増えることを望む。

10.余談:フリーエージェント規定はちゃんと更新されているのか?

選手会のホームページでは、フリーエージェント規約が2009年度版から更新されていないのだが、果たして実際はちゃんと更新されているのだろうか?

また、上で取り上げた特例措置は、いずれも2009年度版の規約には載っていない。もし規約が更新されていないとすると、大問題である。NPBと選手会と12球団が合意しただけの特例を実際に適用していることになる。

仮に「規約で定められていないルールはやはり無効である」と主張し始める球団がいたとして、その球団の言い分は無視できるだろうか。2009年度版のFA規約では、以下の通りに記載されている。

選手は,入団して初めて出場選手登録された後,その日数がセントラル野 球連盟及びパシフィック野球連盟の同じ年度連盟選手権試合期間中(以下 「シーズン」という。)に145日を満たし,これが8シーズンに達したと きに,国内FAとなる資格(以下「国内FA資格」という。)を取得する。 ただし,2007年以降に行われた新人選手選択会議により選択されて入団し た選手のうち,選択された当時,大学野球連盟又は日本野球連盟に所属してい た選手については,上記の8シーズンを7シーズンと読み替えるものとする。

種々の特例は、上記の記載とは相反している(特例なのだから当たり前だが)わけであり、NPBがホームページ上で記載したところで、どこまで有効なのだろうか。規約上でしっかりと追記され定められるべきものではないだろうか。そういう杜撰さが、NPBの発展のスピードを象徴しているように思える。

 

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