強打者度を図る新指標「BA3P」を考えた(2020年8月15日)

いわゆる「いいバッター」からは簡単にはストライクを取れないということは、多くの野球ファンが感じていることではないだろうか。そういう打者にはカウントを悪くしがちで、打者有利なカウントから痛打されたり、そのままズルズルと四球になったりする場面が目立つと思う。

また、追い込まれると打撃成績が落ちるのは一般的な事実であり、「どれだけ追い込まれないか」という能力は打者にとって非常に重要と思われる。

そこで、前々から思っていたのだが、打席でのボールカウントがどれだけ多いかを考えれば「いい打者」の目安の指標を作ることができるのではないだろうか、という考えに行き着く。

1.新指標「BA3P」とは

ということで、新指標「BA3P」を考えてみた。(世の中に既にこのような指標があるかどうかは把握していない。既存だったら申し訳ない。)

「BA3P」とは「Balls After 3 Pitches」の略である。つまり、「打席で3球投じられた後に、ボールがいくつあるかを各選手で平均をとった数字」である。注意していただきたいのが、

  • 3球投じられても結果が出ていない打席に限られていること。(3球投じられた後、ボールとストライクのカウントが存在している打席のみをカウント。)

  • たとえば「BA3P=2.0」ならば、平均的に、その打者には3球投じた後に「2ボール1ストライク」になる。

  • 後ろを打つ打者の打力にも大きく左右される指標である。(後ろを打つ打者が抑えられる確率が高い打者であれば、打席の打者にはボール気味の慎重な配球になると思われる。)したがって、この指標は「打者に対する相対的な警戒度」という側面もある。

という点だ。この指標は特定の能力を明確に示すのではなく、ざっくりと、全体的な打者の「強打者度・選球眼・辛抱強さ・相手からの警戒度」を示している。

2.各選手のBA3P

それでは、今シーズン(2020シーズン)の同指標を見てみよう。(打席数の少ない選手は省略した。)

データは8月13日(木)終了時点だったり、8月14日(金)終了時点だったりして、人によって異なる。(データを8月14日の夕方〜夜に作ってしまったので、こうなってしまった。再度作り直すのも面倒なので、容赦いただきたい。また、正確性についても保証できないのでこの点も理解いただきたい。)

データの並びは、打者、BA3P、IsoD(出塁率ー打率)、OBP(出塁率)である。また、IsoDが優秀な数値の場合は赤字にし、逆に芳しくない場合は青字にしている。これを見ると、IsoDが優れている選手は、BA3Pでも上位に来ることが多いことが分かる。

打者 BA3P IsoD OBP
b吉田正尚 1.800 0.110 0.467
g岡本和真 1.708 0.079 0.352
e浅村栄斗 1.697 0.125 0.427
l山川穂高 1.694 0.168 0.403
f近藤健介 1.665 0.149 0.493
l栗山巧 1.618 0.101 0.391
h柳田悠岐 1.617 0.111 0.498
s村上宗隆 1.614 0.113 0.438
g大城卓三 1.612 0.080 0.381
t梅野隆太郎 1.610 0.092 0.401
l森友哉 1.608 0.068 0.297
hバレンティン 1.607 0.108 0.296
s青木宣親 1.606 0.117 0.424
e鈴木大地 1.604 0.057 0.376
打者 BA3P IsoD OBP
f中田翔 1.600 0.092 0.332
tサンズ 1.596 0.097 0.382
h甲斐拓也 1.593 0.092 0.333
f西川遥輝 1.592 0.144 0.429
c鈴木誠也 1.591 0.108 0.441
s坂口智隆 1.588 0.097 0.356
b安達了一 1.587 0.070 0.381
h中村晃 1.586 0.073 0.378
d高橋周平 1.583 0.073 0.387
d京田陽太 1.583 0.049 0.301
tボーア 1.579 0.093 0.335
e小深田大翔 1.578 0.092 0.383
m中村奨吾 1.575 0.097 0.367
s山田哲人 1.568 0.123 0.349
db佐野恵太 1.563 0.069 0.421
c堂林翔太 1.559 0.062 0.376
m井上晴哉 1.556 0.092 0.386
mレアード 1.553 0.066 0.299
m荻野貴司 1.551 0.081 0.415
cピレラ 1.541 0.046 0.301
打者 BA3P IsoD OBP
bジョーンズ 1.530 0.078 0.321
eブラッシュ 1.527 0.134 0.369
g丸佳浩 1.527 0.086 0.328
c會澤翼 1.523 0.081 0.346
l外崎修汰 1.522 0.086 0.332
db宮崎敏郎 1.519 0.043 0.367
e太田光 1.519 0.098 0.311
dbソト 1.518 0.093 0.360
g坂本勇人 1.517 0.113 0.355
l中村剛也 1.510 0.089 0.322
gパーラ 1.500 0.044 0.339
t木浪聖也 1.493 0.042 0.275
l木村文紀 1.493 0.083 0.314
m安田尚憲 1.490 0.084 0.297
c菊池涼介 1.485 0.068 0.311
c田中広輔 1.480 0.120 0.361
dビシエド 1.476 0.046 0.312
e茂木栄五郎 1.475 0.087 0.422
dbロペス 1.471 0.025 0.281
db梶谷隆幸 1.470 0.078 0.351
打者 BA3P IsoD OBP
t糸井嘉男 1.469 0.122 0.355
mマーティン 1.468 0.133 0.415
m藤岡裕大 1.467 0.119 0.342
d阿部寿樹 1.462 0.044 0.280
d大島洋平 1.460 0.068 0.358
f渡邉諒 1.460 0.061 0.316
bT-岡田 1.455 0.082 0.327
d福田永将 1.452 0.056 0.286
b大城滉二 1.449 0.079 0.284
e島内宏明 1.435 0.051 0.328
l鈴木将平 1.435 0.040 0.260
eロメロ 1.434 0.072 0.399
e辰己涼介 1.432 0.068 0.306
g中島宏之 1.416 0.088 0.363
h今宮健太 1.413 0.018 0.275
t近本光司 1.406 0.055 0.341
bロドリゲス 1.403 0.061 0.268
l源田壮亮 1.389 0.046 0.302
h上林誠知 1.386 0.066 0.248
t大山悠輔 1.372 0.060 0.342
sエスコバー 1.366 0.051 0.344
c西川龍馬 1.366 0.062 0.378
c松山竜平 1.363 0.022 0.313
s山崎晃大朗 1.337 0.060 0.375
g吉川尚輝 1.329 0.086 0.305
f大田泰示 1.317 0.037 0.273
h松田宣浩 1.296 0.038 0.235
h栗原陵矢 1.270 0.054 0.296
b若月健矢 1.254 0.052 0.308
lスパンジェンバーグ 1.162 0.029 0.280
打者 BA3P IsoD OBP

という結果になった。だいたい上から名前を見ると、いわゆる良い打者とか強打者が並んでいる様子が分かる。

3.特徴的な選手

中でも特徴的な選手を水色の網掛けにした。ここでも、順に触れていきたい。

①吉田正尚

ずば抜けての本指標1位である。吉田の打席で、1ボール2ストライクになることが珍しいと言えるレベル。

オリックスの打線は吉田がOPS 1.000クラスで、それ以外の打者は良くてもOPS .700前後となっている。このように、吉田ひとりが傑出しているため、慎重な配球によりボール球先行になりがちであることが分かる。また、高出塁率(.467)は、よく辛抱している結果と言える。

②バレンティン

今年のバレンティンは、OPS .700程度(8月14日終了時点)と非常に奮わないが、それでもボールが先行する傾向が強く、相手バッテリーの警戒度が伺える。打者有利なカウントでボール気味の球に手を出しているために結果が残っていないものと思われる。

③鈴木誠也

セ・リーグでOPS1位の打者だが、この指標的にはトップというわけでもない。若いカウントでは積極的に振ってくるが、追い込まれてからも対応力があるため、OPSが残るのではないだろうか。

④糸井、マーティン、藤岡

ちょうど似たような傾向にある3人が並んでいたのでピックアップ。この指標的には比較的低い(つまりストライク先行になりやすい)ものの、IsoDは .100を大きく超えており、最終的にはよく四球が取れている。

投手からすれば追い込むのはそこまで大変ではないものの、追い込んでからがしぶとい打者と言える。

特に、彼らの特徴として、フルカウントからの四球が非常に多い。糸井は20打席で8四球、マーティンは37打席で19四死球、藤岡は33打席で17四球。

一番難しいと言われるフルカウントからのボールの見極めや粘りが優れていると言える。フルカウントからどれだけ四球を選べるかが本当の選球眼なのかもしれない、と思わせてくれる。

⑤ロメロ

パ・リーグ2位のOPSだが、本指標的には下位に属し、追い込まれるときはアッサリな打者である。ここから読み取れるのは、ロメロの場合は早いカウントで強打をすることで結果が残っているということだ。

したがって、相手バッテリーからすると、いかにしてカウントを取っていくかの工夫が重要になる。逆に言うと、それができなければロメロはリーグ有数のOPSを残し続けるだろう。

⑥大田、松田、栗原、若月、スパンジェンバーグ

3球投じられた後は大体、1ボール2ストライクになっている。彼らは当然ながらIsoDも低く、まさにいわゆるフリースインガーではないだろうか。

打率が高ければ良いものの、打率が低くなった途端に打線の流れを切る存在になる。別の言い方をすると、調子が悪いと扱いに困る打者である。

また、スパンジェンバーグはちょっと打撃スタイルを見直した方がいいのでは・・・と思うレベル。

 

ということで以上、新指標について考えてみた。いろいろな解釈や使い方があると思われるので、気づいたことやアイディアがあれば、是非コメントから教えていただければ有り難い。

 

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