1.良いストレートとは?
同じ球速でも、打者から空振りを取れるストレートもあれば、簡単にスタンドまで持っていかれるストレートまで様々である。
いわゆるノビがある球が良い、とか色々な表現の仕方があるが、私の中での「良いストレートの定義」は、以下だ。(定義と言うほど厳格では無いが、自分の中のイメージはこうだ。)
『打者が反応するための時間が短いストレートが、良いストレートである。』
具体的にどういうストレートが良いかというと、以下の要素が挙げられる。
- 単純に速い。
- 球の出どころが見づらい。
- 変化球と見極めがつきにくい。
- リリースポイントが打者に近い。
- 軌道が水平方向にも鉛直方向にも、真っ直ぐに近い。
1〜4は、当たり前のことを言っているだけである。実際、多くの人に周知の事実であるので、この記事で掘り下げるつもりはない。
ただ、5については意識している人はあまり多くないのでは無いかと思う。したがって、この5について、以後の文章で述べていきたいと思う。
2.軌道が水平方向にも鉛直方向にも真っ直ぐなのが良い
軌道が真っ直ぐなのが良いとはどういうことかと言うと、要するに、
「リリースポイントから打者に到達するまで、最短の経路を通る。」
のが良いということである。最短の経路を通るためには、どういう真っ直ぐが良いのだろうか?何点か、そのための要素を挙げてみたいと思う。
①球の回転軸はキレイに縦で。
バックスピンをなるべくかける。
ボールの回転が空気をかき分ける方向で、流体力学的な力の作用が決まってくるわけだから、ストレートの回転軸はキレイに縦(バックスピン)が良い。
バックスピンだと上方向への揚力がかかるので、重力による軌道の落下が防げる。そして、回転数が多いほうが、揚力が大きいわけだ。ストレートの回転軸が斜めだと、どうしても斜め方向に曲がってしまう。
事実、全盛期の藤川球児のストレートは回転軸がわずか5度で、回転数が2,700/分であったらしい。つまり、回転軸が非常に縦に近く、バックスピンも強くかかっていたわけだ。
藤川を見ても思うが、空振りの取れるストレートを投げるにはどういうフォームが良いかと言うと、オーバースローで、腕や手首の角度が縦に近いほうが良いわけだ。スリークォーター気味のフォームから、縦回転のストレートを投げることは難しい。(と思う。)
ただ逆に、藤川が横に曲がるスライダーを投げるのは難しいと思う。
(余談)バックスピンの揚力と重力が釣り合うためには、どれくらいのバックスピンをかけたら良いのだろうか?誰か知っている人がいたら、教えて下さい。
②シュート回転はダメ。
シュート回転はなぜダメなのだろうか?
答えはシンプルで、無駄にシュート方向に変化することで、経路を長くしているだけだからだ。打者の反応時間を増やしているだけである。
もちろん、投手が投げるストレートはそもそもシュート回転するものなので、その度合いを最小限に抑えることが大事ということだ。
また、シュート回転するボールはそもそも投げ損ない(意図しないボール)だから、威力が小さいというのもある。
③上から投げ下ろすのも考えもの。
角度のあるストレートは打ちにくいとは言うが、鉛直方向の経路長が無駄にかかっており、本当は水平な軌道の方が打者への到達が早いのは間違いない。
角度のある真っすぐは打ちにくい、とよく言われるが私個人は眉唾に思っているので、無理に角度をつけようとするくらいならば、普通に投げたほうが良いと思う。
また、低めに投げるよりも、高めに投げる方が軌道としてはより水平なので、より威力がある。
3.全部の要素を満たそうとするのは机上の空論を追い求めるだけである。
上記、①〜③で良い真っ直ぐの要素を挙げた。が、これら全てを満たすのはただの理想論であり、大事なのは総合力である。
つまり、球速・ストレートの質(回転など)・軌道だけでなく、変化球も含めて自分が一番良いボールを投げられるバランスを追求することが大事である。
緩急をつける投球術、リリースポイントの見にくさ、コントロールがつきやすいフォーム、身体に負担の少ないフォーム、良い変化球が投げられる投げ方、打者がタイミングを取りづらい投げ方・・・。
これらを考えつつ、投手として総合力が最も高くなるような投げ方(フォーム)を追求すべきなのである。
4.具体的にすごいストレート
ノーラン・ライアン、伊良部秀輝、上原浩治、藤川球児は、実に強力なストレートを投げた(る)投手だと思う。あとは和田毅も。
近年だと、サファテのストレートは打てそうな気が全然しなかった。来日1年目(広島時代)のオープン戦でストレートを初めて見たときに、何かの見間違いかと思ったことを今でも覚えている。
5.速いストレート=良いストレート ではない
速いほど良いのは間違いないが、速いから良いかと言うと、そんなことはまったくない。
ただ速いだけ以外に目を見張るものがないストレートを投げる投手は、私の好みではない。(例:コーディエ・・という冗談はおいておき、NPB時代の大谷翔平など)
特に、私が個人的に強く思っているのは、球速が速ければ速いほど肩肘により強い負担がかかるはずであるということだ。
したがって、速いだけの特徴しか無いストレートを投げるくらいなら、球速を抑えて、動かしたり制球を重視した方が良いと、私は常々思っている。
6.最後に余談
逆に、トップスピンのストレートを投げる投手がいたらどうなるだろうか?つまり、沈むストレートである。ソフトボールの投げ方で140キロくらいのストレートを投げる投手がいたら、打者はどういう反応をするのだろうか?
「良いストレートとは何か?その軌道について(2019年8月5日)」への22件のフィードバック