何となくからの興味で、12球団の出身(高卒、大卒、社会人など)の割合を比較してみようと思い、データをまとめてみた。
選手の出身データは、プロ野球選手会のホームページから取得し、ほぼ手作業で集計した。その結果が以下の表である。(2018年5月1日時点)
なお、育成選手を含めると分かりづらいと思ったので、支配下登録されている選手に限定した。
いくつか、特徴的だと思った数字を黄色網掛けにしている。
- ソフトバンクは大卒社会人1名のみ。それも今シーズン中にトレードで獲得した市川捕手のみで、ドラフトで最後に大卒社会人を指名したのは、2012年ドラフト6位の山中投手(現ヤクルト)までさかのぼる。
- 阪神は高卒が少なく、代わりに大卒が多いという珍しい編成。高卒を育成してチームを作り上げるのではなく、大卒を重点的に指名していく方針なのだろう。
- 楽天も大卒が多い。だからと言って高卒が少ないわけではなく、色々な出身から満遍なく取っている。
- オリックスの大卒の少なさと大卒社会人の多さは異常なレベルで突出している。プロ野球全体で大卒社会人の5人に1人はオリックスに所属。
さて、気づかれた人もいるだろうが、この表には過去3年間の平均順位を掲載しているだけでなく、その順で並べてある。こうして並べてみると、下位チームに大卒社会人が多い傾向が強いことが一目瞭然でわかる。視覚的にも分かりやすいよう、以下の2つのグラフを見ていただきたい。大卒社会人の人数と、過去3年間の平均順位、平均勝数をプロットしたものであり、強い相関があることが分かる。
赤線は近似曲線であり、大卒社会人の人数が多いほど、順位が悪くなる様子が分かる。ただ、順位は離散的な値しかとれず、しかも僅かな差で入れ替わることがある。そこで、より正確に理解するために、平均の勝利数で比べてみたいと思う。(次のグラフ)
なお、引き分けは0.5勝としてカウント。
ということで、勝数にしてみると、更に強い相関がある(相関係数がより1に近い)ことがわかった。すなわち、統計的な結論として、大卒社会人が少ないほど強いチームである、と断言できる。
なぜ大卒社会人が少ないほど強いのか??
- 大卒社会人は少なくとも24歳であり、成長の余地に乏しい。また、高校、大学と指名されなかったということは、それまでに圧倒的な素質を示していた訳ではないことを示している。つまり、良くも悪くも無難な選手が多い。
- 良くも悪くも無難な選手が集まるとどうなるか?大崩れもしないが、そこまで活躍する訳でもない。ただ、野球というのは貢献度の低い選手がいくら集まったところで、勝利にはつながらない競技だ。(ということを証明している。)
- 大卒社会人を獲得したとして、年齢的に特に大きく成長が見込めるわけでもないが、出場機会を与えない訳にはいかない。結果としてどうなるか。成長するポテンシャルのある若手の出場機会を奪うこととなる。
- また、多くの高卒入団選手からしてみれば、自分より年上なのに、自分よりショボい選手が入団してきたらどのような気持ちになるだろうか。気持ち良い競争はできるのだろうか。
大卒社会人を指名するときに注意すべきこと
中途半端な選手は指名してはならない。確実に一軍での勝利に貢献する選手を取るべし。投手ならばまだ他の選手の出場機会を奪うようなことはそこまで無いものの、野手で一軍半の選手を獲得するのは若手の出場機会を奪うため、愚の骨頂である。
弱いチームが、比較的即戦力の大卒社会人を取ってるという可能性は無いのですか?
コメントならびにご指摘ありがとうございます。その可能性は大いにあると思います。本記事(初稿)では、「大卒社会人が多いと、弱いチームであることが多い」という統計的因果関係を述べるにとどまり、そこまで踏み込んだ考察はしませんでした。
確かに、「もともと弱いチームが比較的即戦力の大卒社会人を多く取った結果、弱さが継続している」ために、「大卒社会人が多いと弱いチームであることが多い」という図式が成り立っているという可能性は大いに有り得ると思います。(←大卒社会人の人数が1年単位で急激に変動しないという前提でいます。)
その場合、確かに本記事の意味するところは「大卒社会人は補強にはならない」という趣旨になり、少し意味合いが変わってきますね。調べたら面白そうだと思いますので、時間のあるときに、資料をまとめて本記事に追記したいと思います。(どういうデータをまとめたらよいか、考え中です。)
色々な側面からの切り口があると思われますので、ご指摘いただき大変ありがたいです。
まず「チームが弱いときは大卒社会人を多めに指名する」という共通認識が12球団にあった上で,
概して弱いチームには「ドラフトが下手」以外にも弱い理由がいっぱいある(オーナーが介入,ケータリングが菓子パン,などなど)のでそこを改善できない限り弱いまま社会人を指名し続けることになる,ということだと思います.
ぷろすぎる
今さらですが阪神タイガースの現状を言い当ててるような記事ですね