①敬遠の申告制とは
2017年シーズンにMLBで導入されたもので、バッターとの勝負を避けて歩かせるのに、守備側の監督が申告するだけでよい、という制度である。2018年シーズンから日本でも取り入れられることが先日きまった。
これまでは4球ボール球を投げて歩かせていたのが、完全に省略されることになる。つまり、敬遠の際に、「ボール球を打つ」、「暴投になる」、「盗塁を試みる」などのドラマが無くなることになる。また、敬遠独特の間が無くなってしまう、という意見も目立つ(特に選手からのコメントで多い気がする)。
個人的な考えは、「申告制の導入には賛成。ただ、2年間などの時限的制度として導入し、良かったら継続、悪かったら従来通りに戻せばいいのでは?」という結論。以下に自分なりの根拠を長々と書く。
②「申告制」だから従来通りの敬遠もOKだが、、、
まず、「申告制の導入により全ての敬遠が必ず申告制になる」ということはなく、従来通り、4回ボールを投げて歩かせることもできるのだ。
「投げる敬遠が無くなると野球が面白くなくなる!」と考えるチームは、これまでどおりの方法で敬遠すればいいだけの話なのだ。だが果たして、一塁を指差して申告するだけで済むのに、わざわざピッチャーに4回ボールを投げさせるチームはあるだろうか。
守備側にとってみれば、4球ボールを投げることに比べると、申告敬遠はあらゆるリスクを無くせる。手加減をして投げることで感覚が狂うこともない。一方で攻撃側は、守備側にメリットがあるということは、損をするということだ。暴投、ストライクゾーン近くのボールを打つケース、盗塁などの可能性が無くなってしまう。
このように考えると、公平性のためにも、攻撃側の同意が無いと申告敬遠ができないというルールはどうだろうか?という考えにたどり着く。しかし、これは実際問題成り立たないことは少し考えるとわかる。攻撃側は同意してしまうと相手を楽にするだけなので、決して同意することはない。仮に、攻撃側の監督が(時短等の効果を考えて)申告敬遠を認めたら、「勝利する確率を(わずかであっても)自ら下げる行為をした!」とファンから批判されるだろう。
敬遠の申告制は、守備側が申し入れれば無条件で敬遠できる、という前提に立たないとそもそも成り立たないことなのだ。そうまでして、野球本来のルールを歪める意義はどこにあるのか?
③時短効果
このルールの導入は、試合時間の短縮が主な目的であるようだが、そもそもどれだけの時間短縮になるのか。4回ボールを投げるのと、一塁を指差してクイッとやるのとで、ここでは1分の短縮と仮定しよう。本当は45秒かもしれないが、計算の簡単のために1分とする。
敬遠の数(2017シーズン)は、セリーグで44個、パ・リーグで46個しかなく(Baseball LABより)、10試合に1個程度しかない。つまり、1試合平均にすると6秒程度の短縮にしかならない。(改めて調べるまで、こんなに敬遠が少ないとは思っていなかった。)
しかし、
◆塵も積もれば山となる。
少しでも時短するということがそもそも重要。またNPB全体でシーズンで90個敬遠があったとして、全体で90分の時短になる。球場の照明や設備が稼働する時間が90分減るだけで、エコではないか。(一般家庭がどれだけ節電すればこれに匹敵するのか見当もつかない)
◆敬遠はほとんどの場合、退屈である。
4回ボールを投げるということは非常に形式的な行為であり、ほとんどの場合、何事もなくバッターが歩かされるため、刺激や興奮が無い。(ここで言う「ほとんど」が95%なのか99%なのかは分からない。)秒数だけで見ると僅かかも知れないが、退屈な時間を削減することができる。
◆敬遠は退屈ではない、という意見もあるが、、、
「敬遠される次のバッターの様子などを見たり、敬遠されるバッターの雰囲気をじっくり見たりできて、間が面白い」という意見がある。確かにそうかもしれない。だが、敬遠後すぐに次の勝負が始まった方が、もっと熱が冷めず盛り上がるかもしれない。これはやってみないとわからないことだ。それなら、試しにやってみようと思わないだろうか。
④結論
以上、②、③を考えて、「退屈な時間を減らすために、敬遠というルールを変えてみてもいいではないか。」という(前向きな)考えに至った。ただ、実際にやってみて反対意見が多かったり、逆に退屈になるようだったら、元に戻さないとスタンスとしておかしいと思う。
余談だが、個人的に以下の点が興味深い。
◆キャッチャーは座ったままでボールを数個分外して歩かす実質敬遠が、申告制敬遠に取って代わられるか。
◆シーズン終盤のタイトル争い(首位打者、打点王、本塁打王)でよく敬遠を見かけるが、申告してまで敬遠するか。気まずくないか。相当やりにくいだろう。となると、ボールを数個分外しての敬遠になるか。
◆敬遠の数が増えるか。投手のプライドへの配慮が少なくて済みそうなので、首脳陣の判断だけで敬遠に踏み切りやすくなるのでは。
⑤時短への取り組み案
時短なんて、まだまだいくらでもできるではないか。。NPBの公式サイトを見ると、試合時間のデータがこれでもかと言うくらい置いてある。他のデータは全然充実してないくせに、この熱の入れようは何なのだ。もっと具体的な対策をとってもいいではないか。
敬遠の申告制という複雑なことを議論するより前に、時短に効果がありそうなことを書き出してみたい。
◆無走者時15秒ルール の厳格適用
みんな忘れているだろう。形骸化しすぎだぞ。。ただ、15秒経つたびにボールが増えるのでは野球にならない。サインが合わない場合が辛すぎる。1打席の対戦中に15秒以降の投球が1回までOK(2度目以降する度にボールになる)、でどうだろうか。
◆セットポジションの制止基準の緩和
現行は厳しすぎる。あの無駄に止まっている感じがイラッとすること多いのは自分だけ?
◆打席に入る前の曲の短縮
どんなバッターでも何でもかんでも登場曲を流しても白ける。チャンス時や盛り上がるバッター以外は曲など流さず、前の打者の打席が終わったら、さっさと打席に入る。応援団も曲を短くする。
◆ランナーがいるときの投球間隔の短縮
あまりに長いことが多い。牽制を除き、30秒以内に投げないとボールにする。ただ、攻撃側のサイン伝達も長すぎるので、そこも何とかせねば。。
◆延長制度の短縮
3時間30分ルールは時短に有効だったが、時間で区切ると時間稼ぎが発生するということがよくわかった。そこで、球数で区切るのはどうだろうか。ピッチャーの酷使も防げるし、「球数稼ぎ」もやりにくい。(ボールを投げると不利になるため。)例えば、3時間30分になぞらえて、「両チームで330球を超えたら次のイニングに入らない」なんて分かりやすいかも。
◆グラウンド整備の短縮
そんなに綺麗にしない。
理想を言えば、平均試合時間2時間30分で、18時30分スタートの21時終わりが自分的には最高。
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