作戦としてのバントの有用性について考える(2018年6月11日)

この記事は、特にデータに基づいた考察でも何でも無く、自分のバント観を表現した記事である。客観性はゼロと言ってよく、この記事の内容がどれくらい正しいかどうかは、データによる考察と分析の結果と照らし合わせる必要がある。

結論からまず言おう。

ランナー1塁で何も考えずバントさせる野球はもうやめよう。
そして、ランナーが多くいるときほど、選択的にバントしよう。


1.はじめに:リスクとリターン

成功確率  成功時のリターン  失敗時の代償  作戦にかかるコスト
バント 〜70%  中(進塁)  大(ランナー進まずアウト増える。併殺も)  大(アウト献上)

バントの成功確率は、「バント」という作戦を1投球に対して試みたときに成功する確率とした。ファール、空振り、見逃し、バント失敗を考えると、成功確率は7割がいいところだろう。(本当はもっと低いと思うが、敢えて高めに見積もった)

コストは大きいがリターンは中くらいという、「肉を切らせて骨を断つ」ような作戦だ。


2.野球という競技を考える:アウトを与えない競技

野球というのは、相手より多く点を取る競技だ、というのは前提としていい常識だろう。そして、「点を取る」という行為を考えたときに、野球では攻撃のチャンスが明確に限定されていることを意識しなければならない。

まず、イニングごとに攻撃が閉じているので、前のイニングにいくらランナーを出そうが、今のイニングを考えるときには意味がない。そして、そのイニングというものは、3アウトを相手に与えてしまうと終わってしまう。

つまり、3アウトを与える前にいかにそのイニングで点を取るかを考えなければいけないスポーツだ。逆に言うと、守備側はいかにして得点を与えないようにしつつ3アウトを取るかを考える。したがって、アウトを与えうる作戦というのは、リスクが非常に大きいということを意識しなければならない。バントのことを「犠打」というが、その名の通り犠牲(代償)が大きい作戦なのだ。


3.バントが有用な場面と無用な場面

バントが有用な場面と無用な場面をそれぞれいくつか考えてみたい。

<有用な場面>
1、なかなかヒットを打つことが難しい対戦投手がいたとして、その投手からエラーでノーアウト1塁のチャンスを作ったとする。1イニングに2本以上のヒットを望むことができない状況なので、1アウトと引き換えにランナーを進塁させ、残りの2人の打者が1本以上ヒットを打つことを期待した方が得点確率が高いという考えは当然あると思う。この場面で仮にバントしないで点を取るとなると、進塁打を絡めながら、効果的にヒット1本を打つ必要がある。

2、得点圏にランナーを置くと途端に制球が乱れる投手と対戦しているときは、1アウトを与えつつも着実な攻撃が見込めるだろう。

3、ランナー1塁の場面で打者が低OPSかつ併殺打のリスクが高いときは、消極的作戦ではあるが、ヒッティング時のリスクを考えて、アウトと引き換えに確かな前進を得ようとすることは納得できる。

<無用な場面>
1、しかし、併殺打が無い打者であれば、凡退でもランナーが残る可能性が高く、ましてや進塁打となってバントと同じ結果が得られることもある。ヒットや四球になる可能性(アウトを与えない可能性)や更には長打の可能性も考えれば、バントは明らかに得点効率を欠く作戦である。

2、したがって、特にノーアウト2塁からのバントは言語道断であると言いたい。1点だけ取りに行くのであればいいかもしれないが、打たせたときに併殺打のリスクが少なく、むしろライトフライでタッチアップの可能性がある状況だ。バントというのは、1点だけを着実に取りに行く作戦なのだから、ノーアウト2塁でバントさせるくらいなら、その後の1アウト3塁でスクイズをするくらいでないと筋が通らない。


4.バントが戦略として下策である点

1、こんなイニングを考える。1人目のバッターが4球目をヒット、2人目のバッターが「リズムよく」初球バントを決め、3人目のバッターが4球目を凡退、4人目のバッターが4球目を凡退、と仮定したとき、そのイニングの球数が13球にしかならない。適当な例を挙げたが、要するに、3アウトのうちの1アウトを1球で与えてしまったら、残りの2アウトをサクサク取られると、球数が非常に少なくなるということだ。

2、更にバントというのは、ストライクゾーンに投げておけば、遅くても3球で終わる。しかも打たせないように慎重になる投球ではないので、消耗が少ない。特に、初めからバントの構えをし、ピッチャーに正対するように構える打者はヒッティングしないと宣言しているようなものなので、相手からしたら非常に楽だし、いいチャージができればもしかすると併殺を取れるチャンスになってしまう。

3、ランナー1塁からバントして取れる点数は1点がいいところ。おたくに1アウトあげるから、代わりに1点だけ取られるリスクがある状況にさせてもらうよ、というのがバントだ。試合展開にもちろんよるが、野球な基本的なフィロソフィーは「相手より多く点を取る」ということを考えれば、ヒッティングにより、複数点を取りに行くのが取るべき作戦だろう。

自分の考えをまとめるとするならば、「ヒッティングさせれば、併殺打の可能性もあるものの1スイングでランナー1塁から2点取れる可能性がある。しかし、バントでは点は取れない」ということだ。


5.野球人は「バントの進化」を考えよ

誰もが「バント」と聞くと、ランナー1塁からのあの儀式的行為のことを思い浮かべる。それでは、野球というスポーツがつまらないではないか。バントをより昇華した存在とし、価値を高めないと、上記で述べたとおりバントは多くの場合無用だ。

<バントで塁を2つ進めよ>
先頭バッターが出塁したら、バントさえすれば1アウト3塁になるということが実現したら、非常に守備側は嫌だろう。同点の拮抗した場面でこれをやられると、得点確率が一気に高くなるだけでなく、途端に前進守備や敬遠などリスクの増す守備的選択を迫られる。
実現する方法として、ランナーは当然盗塁のスタートを切るとして、どこにバントをしたらよいだろうか。
サードに取らせるバントを考えるが、ショートがベースカバーに来るので、成功率は△だろうか。
自分が思いついたのは、一塁線にバントを転がし、捕球した投手か一塁手がタッチしに来たら思いっきり走路上でぶつかり態勢を崩させる(転ばすくらい)、という作戦だ。ただ、これは対策されれば成功確率はゼロになってしまうので、せいぜい、時折用いる奇策程度のものだ。
ランナー2塁から一気にホームに生還できるバントも実現したらより魅力的だ。これはランナーがスタートを切り、ショート前やセカンド前に強いバントを転がせばいけるかもしれないが、ショートかセカンドがホームに送球したらそれで終わりか。

<ランナーが溜まっているときほどバントの効果は高い>
ノーアウト1塁2塁からのバントは、(本当は違うが)2塁ランナーが据え置きで1塁ランナーを3塁まで進めるのと同じようなことである。つまり、ランナー1塁からのバントの2倍効果があると考えられ、打者次第では非常に有用な作戦と考える。

また、ノーアウト満塁からのスクイズバントも、成功したときのリターン(+1点かつ1アウト2塁3塁に)が大きく、作戦として非常に魅力的だ。合計で3つも進塁しているのだから、これは1アウトと引き換えでも明らかに得と言えるだろう。変に打たせてホームアウトの併殺打になったら1点も取れないかもしれないが、スクイズが決まれば1点取れる上にさらにワンヒットで3点目まで狙える状況になるという。(2008年の北京オリンピックの予選だっただろうか、1点ビハインドの終盤でサブロー選手が満塁からスクイズを決めた試合があった。あれは試合の勝敗を決めるビッグプレーだった。その決断に踏み切った星野監督の采配も素晴らしかった。)

<進塁打を打つ技術を高めよ>
凡退でもランナーを進めるような凡打を確実に打つことができる選手がいれば、この世からバントは無くなるだろう。また、いわゆる送りバントをするくらいなら、全部セーフティーにして、ヒットになる可能性を高めるべきではないか。つまり、セーフティーでもバントができるように練習すべきだ。


6.バントの損得分岐

以下の表は、ノーアウト時に、ランナーの状況に応じて、バントの効果を考えたものだ。結論としては、標準的な左打者(OPS.650)を考えたとき、①1塁2塁、②1塁3塁、③満塁の場面に限り、バントが作戦としてありえる。

損得分岐OPSは、「このくらいのOPSがあれば、バントよりも打たせた方が得。」というライン(個人的な体感上の数字)である。幅がある場合があるのは、併殺打のリスクに応じた数字である。例えば、併殺打のリスクが高い打者をランナー1塁の場面で打たせる場合、OPS .650はないと割に合わないという風だ。もちろん次の打者や点差によって変動するが、大体の目安として自分はこれくらいに考える。

フォースアウト メリット 成功確率 併殺打 損得分岐OPS
1塁 あり あり .600 〜 .650
2塁 なし なし .570
3塁 なし なし .630
1塁2塁 あり あり .650 〜 .700
1塁3塁 一応あり あり .650 〜 .700
2塁3塁 なし なし .630
満塁 あり 特大 小〜中 あり .650 〜 .700

ただし、ランナーが3塁にいるときのバント(スクイズ)はウエストされればそれで終わりなので、常に選択すべき作戦ではもちろん無く、選択肢のひとつとして常に考えるべき作戦、と表現する方が正しい。


7.その他バントに対して思うこと

1、バットにボールが当たったらすぐに走れ、と声を大にして言いたい。スイングしているわけでもなく、体力を全然使っていないのだから、併殺打になるリスク(あえてフライをバウンドさせてから捕球する作戦)を少しでも減らすために、全力で走り出すべきだ。というか、バントした後に打者ができることは全力で走ることしかないのだから、それを癖にしないといけない。
よく、小フライになった打球を見上げてしまう打者がいるが、自分にできることを放棄している怠慢プレーに他ならない。

2、投手の打席など、バント以外ありえない打席がある。しかし、そういった場合でも普通のバットを持って打席に入っているのだと思う。しかし、突き詰めると「遠くに飛ばせるバット」(スイング用バット)と「バントしやすいバット」(バント用)は、きっと異なるのだと思う。どこかのメーカーが、「バント専用バット」を開発したら売れるのではないか。あるいは、どこかのチームが秘密裏にそういうバットを独占的に開発したらどうか。

作戦としてのバントの有用性について考える(2018年6月11日)」への22件のフィードバック

  1. 興味深いタイトルを見付けて読ませていただきました。
    巨人の原監督が満塁でもスクイズのサインを出してゲッツーを喰らうシーンを何度でも見せつけてくるので、都度、バカじゃん、と思っていましたが、ここではむしろ肯定的で、そういう考えもあるのか、と思いました。

    1. コメントありがとうございます。そして、長い投稿にもかかわらず読んでくださり感謝です。
      満塁でスクイズゲッツーを連発するのは、勘弁してもらいたいですね。ただ、それも「攻めた結果の失敗」というのが、私のバントに対する考えです。
      少しでも何かご参考になればブログを書く者として冥利に尽きます。

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